表題番号:2013A-6259 日付:2014/02/27
研究課題屋外広告物収入を活用したタウン・マネージメント
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 後藤 春彦
研究成果概要

(1)背景
中心市街地活性化法を契機に、近年、わが国の各都市の中心市街地において、都市空間のマネージメントを担う組織がTMO(Town Management Organization)として設立されている。自治体や既存の商業者団体とは異なる新たなまちづくりの主体として期待されているが、多くのTMOはその活動資金の捻出に苦慮している。
一方、屋外広告物は各都道府県の条例によって一律に規制されてきたが、最近ではそれぞれの都市空間の実態にあわせた地域ルールの設定が議論されている。特に、近年では、税収が伸び悩む中で、屋外広告物の規制緩和による増収を新たなまちづくりの財源として公共に還元することの社会実験がこころみられ、都道府県によって特例許可される事例も増えている。
 研究代表者は、東京都景観審議会・委員、同計画部会・専門委員、東京都広告物審議会・会長代理、同特例小委員会・委員長、同規格等検討小委員会・委員、東京都東京における今後の屋外広告物規制のあり方検討委員会・委員、新宿区景観まちづくり審議会・副会長などをつとめるとともに、2012年度は、新宿区歌舞伎町地区デザインガイドライン策定委員会・委員長の職にあり、対象地区の屋外広告物および都市景観行政を熟知しているとともに、歌舞伎町地区の都市再生の実務にも携わってきた。東京都および新宿区の行政、商店街組合、TMOとの連携も確保されている。

(2)目的と対象
本研究では、屋外広告物収入を活用したタウン・マネージメント実施の可能性について検証することを目的とする。
研究対象地を東京都新宿区歌舞伎町を対象とした。
歌舞伎町は健康的な歓楽街をめざして戦災復興土地区整理事業によって誕生したまちであるが、現在は風俗営業が多く集積し環境の浄化が求められている。本研究では、ニューヨークの民間資金で都市をマネージメントするBID (Business Improvement District) 制度を参照しつつ、屋外広告物を活用して都市のイメージをより良いものにすると同時に、掲出規制緩和による広告料収入を都市空間の整備費用やイベント運営費用等公共的なまちのマネージメント費に充てることを目論んだ持続性のある仕組みを計画的に構築することをめざした。

(3)成果
①屋外広告物の掲出規制緩和の論理と可能性
②屋外広告物の掲出規制緩和による広告料収益の公共への還元方法
③都市景観の視点からの屋外広告物のデザインの自主規制の仕組みについて検証した。
さらに、
④研究成果を社会に対してアッピールすることを意図し、ビデオ動画像にとりまとめた。

(4)波及効果
新宿区歌舞伎町の再生デザインに関わるひとびとを糾合し、早稲田大学を会場に、歌舞伎町デザインカンファレンスを2度開催し、デザイン調整を行った。
 研究代表者の大学院における講義「景観・地域デザイン特論」において、新宿区都市計画部景観と地区計画課およびTMOの全面的な協力のもと歌舞伎町をフィールドに景観批評を行い、成果をビデオ動画像にとりまとめた。
 さらに、研究成果をもとに、新宿区は「新宿区屋外広告物に関するガイドライン等検討委員会」を設立し、研究代表者が委員長に就き、「屋外広告物収入を活用したタウン・マネージメント」を実践する環境が整った。