表題番号:2013A-6254 日付:2014/03/04
研究課題マルチフェロイック酸化物における磁性元素の電子状態解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山本 知之
研究成果概要
近年,再生可能エネルギーに関する研究が活発に進められてきており,その中の一つとして圧電素子に関する研究が活発に進められてきている.圧電素子の材料 としては,高い圧電性能を示すことからこれまで鉛を含む材料が中心に用いられてきたが,環境に対する意識の高まりから,近年鉛を含まない非鉛系の圧電材料 の開発が進められてきている.非鉛系の圧電材料としては,KNbO3-NaNbO3-LiNbO3系,(Bi1/2Na1/2)TiO3や(Bi1 /2K1/2)TiO3系,ビスマス層状構造強誘電体(BLSF),(K,Na,Li)(Nb,Ta)O3などがそれぞれに特徴を持った特性に対して研究 が進められている.

上記の非鉛系圧電材料の中で,ビスマス系層状強誘電体Bi4Ti3O12にMnやFeなどの3d遷移金属及び希土類元素を共添加することで,圧電(誘電)特性が向上するという報告がある.それと同時に,強誘電性と共に強磁性を発現するマルチフェロイック特性を示すという報告もある.従来の研究では,添加元素の組合せや添加量を変えた試料を作製し,物性を評価し,求める物性値を最適化することを目標とする研究が主として行われてきているが,添加元素の局所環境や添加元素のイオン価数状態,更には元素添加 による電子状態の変化等に関する研究は,圧電(誘電)特性の変化に関するメカニズムを理解する上で必要不可欠であるにもかかわらず,これらの研究はほとんど行われていないのが現状である.

本研究では,ビスマス系層状構造強誘電体の一つであるBi4Ti3O12にFeを添加することによりマルチフェロイック特性を示す物質を固相反応法により作製し,粉末X線回折実験による結晶構造評価を行い,Feの電子状態並びに局所環境について,シンクロトロン放射光を用いて評価した.また,比較のためにMnを添加したものも同様の方法にて作製し,評価した.具体的には,Mn及びFeの電子状態(価数)を評価するために分子科学研究所UVSORのBL-4BにてMnおよびFeのL3端X線吸収端近傍微細構造(XANES)スペクトルを測定した.また,大型放射光施設SPring-8のBL01B1にてFe-K端,第一原理計算法を用いたスペクトル形状の解析を行い,Feの局所環境について評価した.更に,第一原理計算による固溶エネルギーの評価を行い,上記の実験結果と合わせて,Fe及びMnの局所環境解析が行えた.これらの成果をまとめて,下記の国際会議及び論文発表を行うことができた.