表題番号:2013A-6248 日付:2014/03/02
研究課題脳信号を利用した連続認証システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松山 泰男
研究成果概要
非侵襲計測によりオンラインで得た脳信号を用いて、権利のあるユーザがマシンにアクセスしているのか、あるいはなりすまし者が何かを行おうとしているのかを連続的に認証するアルゴリズムと、それを実現するシステムを構築した。
 上で述べたキーワードの一つである非侵襲計測とは、弱い接触により身体の組織を破壊することなく生体信号を測る方式を意味している。非侵襲計測は、今後のウェアラブルコンピュータとの連携が予想されるものである。第2のキーワードは連続認証であるが、これはパスワード認証とは異なる能力を有している。すなわち、パスワード認証にはパスワードの盗難すなわち成りすましが付きまとう。そこでパスワード認証により成りすましを防ぐためには、ユーザの作業中に時間をおいて何回もパスワードの要求を行う。これには次のような不都合が付きまとう。例えば、ユーザがコンピュータではない機器、例えば重機などを捜査中の場合、事故につながる。一方、連続認証は生体信号(バイオメトリクス信号)の利用と相性がよく、コンピュータ以外の機器の作業中でもユーザ認証が可能である。そこで、この研究では、非侵襲計測によるNIRS脳信号(近赤外分光法)を用いて連続認証を行う方式を開発し、99%を超える認証性能を、世界で初めて達成した。ここで用いた手法は、次の通りである。
(1) 脳信号の低周波数を取り出す高速フーリエ変換:これは、ユーザの個性が極低周波領域に現われるためである。
(2) 主成分分析:これは、外れ値を取り除くためである。
(3) サポートベクターマシン:これは通常の使用とは異なり、低周波領域に重みづけを行うためである。
(4) マハラノビス距離による判定:これは、認証を受ける各ユーザの脳信号のパターンが、上記の(1)~(3)により十分にクラスター化されるという予備実験に支持されたものとなっている。
なお、米国のDARPAは、2011年11月にBeyond the Passwordsという計画をアナウンスしているが、この研究はあくまでも市民生活のための利用を企図したものである。