表題番号:2013A-6203 日付:2015/03/31
研究課題国際財務報告基準における無形資産に係る当初認識後の会計処理方法に関する歴史的分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 准教授 山内 暁
研究成果概要
本研究は、国際財務報告基準における無形資産に係る当初認識後の会計処理方法とそれを巡る議論の歴史的変遷を手がかりとして、そこにみられる会計の概念的変容について歴史的な視点から検討し、現代的課題を示すことを目的としていた。
本研究ではまず、前会計基準設定主体であるIASC(International Accounting Standards Committee:国際会計基準委員会)から公表されたIAS(International Accounting Standards:国際会計基準)および現会計基準設定主体であるIASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)から公表されたIFRS(International Financial Reporting Standard:国際財務報告基準)において、無形資産に係る当初認識後の会計処理方法(特に償却と非償却に関係する会計処理方法)がみられる主要な会計基準とそれらの公開草案を網羅的に渉猟した。具体的には、無形資産に係る当初認識後の会計処理方法が最初に示された1977年公表の公開草案第9号「研究開発費の会計」を起点として、現行基準である2004年公表のIAS第38号(改訂版)「無形資産」に至るまでの無形資産に係る当初認識後の会計処理方法(特に償却と非償却に関係する会計処理方法)の変遷を整理・分析することにより、そこにみられる変化・変容を確認した。本研究ではさらに、IASCおよびIASBの会議報告等を手掛かりとして、上記の公開草案および会計基準をめぐり、いかなる議論が行われたのかを整理・分析した。それにより、実際に公表された公開草案および会計基準からのみ確認できる変化・変容のみならず、そのような変化・変容の兆候が(実際の公開草案・会計基準として現れないにしても)いつ頃から生じたものであるのかについても確認することができると考えた。本研究ではまた、実際に国際財務報告基準を任意適用している日本企業における実例を確認することにより、実務における無形資産に係る当初認識後の会計処理方法(特に償却と非償却に関係する会計処理方法)にみられる変化・変容を確認することができた。
今後、上記の成果にさらなる考察を加え、論文として公表する予定である。
なお、本研究は国際財務報告基準における無形資産に係る当初認識後の会計処理方法をテーマとしていたが、当初認識後の会計処理のなかでも特に償却と非償却の問題のみしか取り扱うことができなかった。当初認識後の会計処理に係る論点は他にも数多くある。それについては今後引き続き研究を行っていくことにしたい。

■追記
2014年度特定課題「国際財務報告基準における無形資産に係る歴史的研究-理論的側面を中心に」(課題番号2014K-6116)における研究発表成果で示した以下の論文の一部は、本研究の成果でもある。

山内暁.2014.「国際財務報告基準における無形資産の償却に係る歴史的変遷―取得原価主義会計の揺らぎから堅持・そして変容へ」産業経理.74(2).