表題番号:2013A-6200 日付:2014/04/26
研究課題競合からの特許侵害がない模倣や技術流出が起こる中での様々な特許政策の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 准教授 市田 敏啓
研究成果概要
研究代表者の市田は早稲田大学商学学術院から特別研究期間(在外)で、2012年の3月より2014年3月まで米国のコロラド大学ボルダー校にて研究生活を行った。
コロラド大学には国際貿易の分野と知的財産権(特許や商標権など)の複合分野で活躍されているキース・マスカス教授がおり、彼と研究上のさまざまな相談をしながら、グローバル経済の中での特許制度に関する研究を進めた。
この分野ではワーキング・ペーパー「Imitation versus Innovation Costs: Patent Policies under Common Patent Length」を昨年から今年にかけて執筆し、3箇所の国際的学会と2箇所の大学、研究所(RIETI)でのセミナー・ワークショップにて研究報告を行った。
論文では潜在的に特許を申請できる新しい技術上のアイディアが模倣費用とイノベーション費用の2次元において異質に分布している場合の発明者の投資インセンティブと特許申請行動、およびその後の技術的追随者の模倣行動について分析する。イノベーション費用とは発明者が最初に思いついたアイディアを特許申請可能かつ市場に製品として出せるまでの費用である。模倣費用とは、発明者が特許申請をした後に、追随者が特許を侵害しないように類似製品を開発する費用のことである。これらの費用が2次元で異質に分布しているようなときに、政府のさまざまな特許政策が、発明者のインセンティブや追随者の模倣行動にいかなる影響を及ぼすのかを分析した。とくに特許の存続期間が、異なる産業においても同一(共通)である場合には、オリジナルの発明の特許を侵害しないで模倣をすることが均衡において可能な条件を導いてある。また、「ソローの封筒制度」と呼ばれる営業秘密を促進する政策の効果も分析した。
今回早稲田大学の特定課題研究費で2013年9月にイタリアのバーリで開かれた国際学会と、英国のバーミンガムで開かれた欧州貿易研究学会にて当該論文の研究発表を行った。また、2013年の10月にはシンガポール経営大学院にて招待セミナー発表を行った。現在はそれらの研究報告によって得られたコメントなどをもとに国際的な学術雑誌へ論文投稿をするために改訂作業を行っているところである。