表題番号:2013A-6189 日付:2014/04/04
研究課題CSRとコーポレート・ガバナンス-日本企業における取り組みの現状と課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 谷本 寛治
研究成果概要
本研究では、日本企業の経営において、CSRがどのように理解されマネジメント・システムに組み込まれているのか、またそれがいかに統治されているのか、ということが問題関心の中心にある。CSRとコーポレート・ガバナンスをめぐる取り組みの現状と課題を明らかにすることを目的として、文献調査および複数企業へのヒアリングを行い、国際カンファレンスにおいて報告を行った。
まず文献調査では、CSRとマネジメント/ガバナンスに関する論文、および企業とステイクホルダー・エンゲージメントに関する論文のサーベイを行い、CSRとコーポレート・ガバナンスの関係性について、理論的フレームワーク構築に向け考察した。
さらに、日本企業のみならず在日欧州企業にもインタビューを行い、「どのようにCSRを中期経営計画、経営戦略の中に組み込み、中長期的ビジョンのもと、戦略を立て、実行計画を示し、社内各ラインに落とし込む作業を進めているのか」という問いについて、企業経営者・担当者より現状を聞いた。
これらの文献調査およびヒアリング内容を踏まえ、「CSRとコーポレート・ガバナンス」を統一テーマとする国際学会で報告を行った(主催・共催:企業と社会フォーラム・フンボルト大学国際CSRカンファレンス・ベルリン日独センター、2013年9月19日実施のPlenary Session)。
本報告において、日本企業では2000年代より、CSR部署の設置や担当役員の任命、CSR報告書の発行、ステイクホルダーとの対話の場の設定など「制度化」は急速に進んだものの、「社会的・環境的関心をマネジメントプロセスや事業活動の中に、またステイクホルダー
との関係の中に組み込んでいくこと」というCSRの本質はまだ充分理解されているとは言えない現状を明らかにした。そして、企業はステイクホルダーからの経済的・環境的・社会的期待に応えていくことによって、株主価値を高めることができることを指摘した。今後の課題として、CSRを戦略や中期経営計画、各部署の行動計画に組み込み、経営委員会において半期/四半期ごとに財務/非財務パフォーマンスをチェックしていくことが求められることを指摘し、今まで以上に実質的なステークホルダー・エンゲージメントが重要であることを指摘した。