表題番号:2013A-6188 日付:2014/04/11
研究課題途上国の自発的経済発展の要因:公的融資と民間のFDIデータによる分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 高瀬 浩一
研究成果概要
 最も一般的な出発点として、新古典派マクロ動学理論により受入国の経済をモデル化する。受入国は代表的個人の重複2世代により表される。資本と労働の2生産要素を使い、新古典派生産関数により1財が生産される。個人は2期の消費を最適化し、消費と貯蓄を決定する。結果として、一人当たり資本量の最適動学経路が導出される。これを前提として、受入国を資本市場の小国開放経済として、外部的移転の影響を分析する。国内資本量は受入国の資本の限界生産が外生的に決定される国際利子率と一致するように決定される。
 この経済に対する海外援助として、以下の4つを分析する。若い世代の消費のみに使用される消費援助、若い世代の所得を補助するための所得援助、生産可能性を高めるための資本財援助、国内投資を促進する資本援助融資である。これらの援助政策の効率性は、以下の4つの尺度により評価される。若い世代の消費量と所得量による、消費基準と所得基準、そして、受入国の経済成長による成長基準、受入国の個人の効用による効用基準である。
 分析の結果、興味深い知見が少なからず得られた。例えば、完全予見のもとでは、所得援助と資本財援助は全く同等の影響を与えることが分かった。つまり、贈与の使用方法に関わらず、受入国の所得や効用に対する影響は変わらないという、一見直観と反する結果を得た。さらに、資本融資のみが成長基準を満たすことが明らかにされた。贈与の方が融資より優れているという、伝統的な開発援助の常識を覆す結果となった。
 計量的な分析の準備として、主に世界銀行のWDI(World Development Indicators)のFDIデータを使い、大多数の開発援助国が小国開放経済であることを確認した。将来的には、IMF等のデータを基に、3つのケース(完全閉鎖、一時的開放、完全開放)を設定する。さらに、各ケースにおいて、資本流入(インフロー)あるいは流出(アウトフロー)の禁止、規制、自由の影響を分析する。最後に、資本インフローの選択肢として、通常の民間の直接投資に加えて、政府や国際機関からの開発援助ローンやその他の公的ローン(金利や融資条件が民間に準じた)の影響を比較分析する。