表題番号:2013A-6186 日付:2014/02/27
研究課題周作人書簡の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 小川 利康
研究成果概要
 当初の計画通りの順序で以下の書簡のOCR化を進めてきた。1)『魯迅研究資料』(1号~24号)掲載の関連書簡および「周作人日記」(1898年~1916年及び1921年~24年)、2)『新文学研究史料』掲載の「周作人日記」(1917年~1920年)、3)『周作人江紹原早期書簡』、4)『周作人兪平伯書簡』。ただし、鮑耀明所蔵の周作人書簡集はOCR作業が間に合わず、来年度に取り組むことを予定している。
 現在のところ、ほぼ予定した書簡のデジタル化が完了しPDFで閲覧できる状態になっているが、Adobe AcrobatによるOCR作業では期待したほどの精度が得られず、ほとんどの書簡についてデータ検索に堪えるレベルとなっていないため、別途OCRソフトとしてABBYY FineReader 11を購入し、再度OCRをかけてから、人力による校正作業を進めた。このため校正作業が現在もまだ完了していないため、来年度も引き続き続行する予定である。
 現時点ではOCR作業と文字校正作業だけであるため、研究成果はいずれも未発表であるが、1)1920年代前後の魯迅と周作人の二人の動向が双方の日記書簡を相互参照することによって、より重層的に明らかになってきた。2)兪平伯、江紹原は1920年代から文革直前まで極めて長い交流を持つ師弟であるが、その交流の実態が改めて浮き彫りになった。3)松枝書簡だけでは、文旨が良く読み取れなかった箇所も同時期の鮑耀明の書簡と相互参照することで多くの部分が明らかになった、以上の三点が本研究の成果である。
 また、想定外の副産物として会津八一記念館に本学教授であった安藤更生氏宛の周作人書簡が所蔵されていることが分かり、併せて調査を行った。すでに記念館のスタッフによって日本語への翻刻も行われていたが、目録にも記載が無かったため、これまで未見であった。書簡は戦前から戦後にわたって50通余り残されており、松枝茂夫宛書簡にも劣らぬ貴重な資料であり、中国の論文誌『現代文学研究叢刊』(現代文学紀念館、北京)に掲載紹介される予定である。