表題番号:2013A-6185 日付:2014/04/11
研究課題意図せざる結果を克服する組織の効率性と創造性を同時に実現する組織行動の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 教授 大月 博司
研究成果概要
 組織行動のメカニズムはヒトの協働が中心であるという面で,いかなる組織も基本的に共通しているが,組織行動には意図せざる結果がしばしば起こる。本研究では,こうした問題発生のメカニズムが組織現象に固有なものかどうかという観点から,組織現象を構成するルーティン活動とコントロール活動の関係性に着目し,意図せざる結果を克服する組織の効率性と創造性を実現する組織行動の解明を行った。
 近年,市場環境の急激な変化と複雑性・多様性の増大を背景に,意図的に競争優位を図る組織のロジックが多様に探求されてきた。たとえば,競争優位の戦略論では,効率性を軸にM. ポーターによるポジショニング的考えや,J. バーニーなどによる資源ベースの観点が広く議論されてきたが,その内容は,一方で市場環境を重視した見方であるとともに,他方,組織の能力を重視するものである。そして,両者の観点からするといずれも,戦略の実践プロセスにおいて,経営トップ層は効率性を求めながら創造性も必要だという意図せざるパラドックス状況に直面せざるを得ない。では,どのような組織の仕組みがあれば戦略実践に内在するパラドックスを意図的に回避し克服することが可能なのだろうか。
 こうした疑問に答えるには,効率性と創造性の同時実現に伴うパラドックス現象の生起メカニズムを的確に捉えることが必要でることから,組織変革を軸にその関係性の解明に取り組んだ。そして,組織の効率性と創造性という伝統的にトレードオフ関係とされる問題状況の克服が組織変革を通じて可能であるという示唆を得るに至った。
 今後の課題は,以上の点を踏まえながらさらに多くの事象を検討し,効率性と創造性を同時に実現するメカニズムの検証が求められるところである。また,組織行動の軸である組織ルーティンのダイナミックス性を基軸に,組織コントロールによる効率性と創造性の関係に焦点を合わせ,意図せざる結果を避けられる意図的実現を図る新しい組織モデル構築が理論的かつ実証的に求められるのである。