表題番号:2013A-6146 日付:2014/03/17
研究課題教師のライフストーリーから見る戦後日本教育史
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教授 小林 敦子
研究成果概要
 近年、質的調査に対する研究関心の高まりとともに、ライフストーリー(人生の物語)といったタイトルの著作や論文が増え、社会学や文化人類学などの分野から聞き取りを基礎とする研究が数多く生み出されている。
 ライフストーリーは、自己論(アイデンティティ論)と密接に関連しているが、それとともに、個人の語りを規定している文化制度としての「語り」を含む概念であり、教育学研究にとっても、重要な意味を持つと考えることができる。
 本研究においては、教師、あるいは教師経験者(1930年代から50年代生まれ)のライフストーリーに基づきながら、日本における戦後民主主義教育の実態を明らかにすることを目的としている。戦後民主主義の中で育ち教員となった教師たちが、現場においてどういった教育理念をもとに、どのような教育を行おうとして、どういった学生を育ててきたのかを検証する。具体的には、教師へのインタビューに依拠しつつ、関連文献と突き合わせながら、オーラルストーリー(口述史)を作品化した。
本研究プロジェクトでインタビューを実施した教師は、①1940年代生まれ、中学校・特別支援校教員、教育長経験者、②1940年代生まれ、小学校校長経験者、③1950年代生まれ、小学校校長経験者、④1950年代生まれ、小学校教育、大学教員経験者、⑤1970年代生まれ、僻地における教育コーディネーター、以上である。
 また、本プロジェクトは、中国の北京師範大学教育学部との協力の上に進め、中国においても、小中学校教員及び教員経験者(1930年代から70年代生まれ)の聞き書きを行っている。
 日本側5本、中国側5本のライフストーリーを収録して、2014年6月に、中国の教育科学出版社から、書籍を出版予定である。
 こうした日本及び中国における教員の聞き書きといった両国における研究を土台としながら、今後、日中両国を比較検討しつつ東アジアにおける戦後教員史を明らかにすることを将来的には構想している。