表題番号:2013A-6121 日付:2014/04/06
研究課題社会的ネットワーク分析を用いた高齢者の対人関係とQOLの関連の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 准教授 福川 康之
研究成果概要
 本研究は,地域の健康教室に参加する高齢者の対人関係の分析を通じて,社会的ネットワークがQOLに影響するメカニズムを検証することを目的として計画された.
 聖路加看護大学老年看護学教室が介護予防の試みの一つとして行っている転倒予防教育講座「SAFETY on! 12週間プログラム」に参加している高齢者を対象として,2013年8月(プログラム開始時)に面接調査を行った.調査項目はプログラム参加者同士の親密さの程度,QOL(生活の質),ソーシャルキャピタル,健康状態などであった.つづいて11月(プログラム終了時)にも同一対象者に面接調査を行い,プログラム参加者同士の親密さの程度,QOL,健康状態を測定した.
 これらのデータを社会的ネットワーク分析(Social Network Analysis: SNA)という手法で解析した.はじめに参加者同士の親密さに応じたネットワークを可視化し,教室参加者の関係性を検討した.その結果,密度や推移性といった指標の値は,プログラム開始時よりプログラム終了時が高く,プログラムへ参加によって親密なネットワークが形成されることが確認された.また,QOLの平均値も,プログラム開始時よりプログラム終了時が有意に高かったことから,プログラムへの参加を通じたネットワークの充実が,参加者のQOLの向上に資する可能性が示唆された.
 つづいて,情報中心性が次数中心性や媒介中心性といった指標を算出し比較したところ,先行研究と同様,情報中心性が次数中心性や媒介中心性よりも参加者のネットワーク内の位置を鋭敏に反映する指標であることが示された.
 なお,本研究は2014年の夏に同一対象者に対する第三回目の追跡的調査を予定している.これにより,プログラムの開始時と終了時の短期的な社会的ネットワークの変容のみならず,長期的な維持や変容の過程を検証し,健康やQOLへの影響を検討する.得られた研究成果は,国内外の学会や学術雑誌にて随時報告・発表していく予定である.