表題番号:2013A-6110 日付:2014/04/09
研究課題ドイツにおける現象学的知識社会学運動の展開に関する理論的・実証的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 那須 壽
研究成果概要

1)2009年度の特定課題研究助成を受けて行われ、その成果を “The Phenomenological Sociology Movement in the United State” (in, Interaction and Everyday Life, eds. by H. Nasu & F. Waksler, Lexington Books, 2012, pp. 3-21) として刊行した「アメリカ合州国における現象学的社会学運動の展開過程と科学共同体の構築過程に関する研究」(2009A-016)の後を受けて、そのドイツ版として企画された本研究の中心的課題は、世界的規模での「現象学的知識社会学運動」をその最初期から今日まで支え続け、牽引し続けてきたトーマス・ルックマン (Thomas Luckmann) コンスタンツ大学名誉教授が創設した「コンスタンツ大学社会科学文庫」(Sozialwissenschaftliches Archiv) に所蔵されている様々な関連資料に直接あたり、ドイツにおける「現象学的知識社会学運動」の展開過程を知識社会学的に解明するための第一歩を踏み出すことにあった。
2)そこで8月6日から1週間、コンスタンツ大学に出かけ、「コンスタンツ大学社会科学文庫」の責任者であるヨハン・ドレハー博士(Dr. Jochen Dreher)の全面的な協力のもと、同文庫に所蔵されている関連資料のすべてをチェックし、関連する文献、ならびに関連するカンファランスの開催状況についての一覧表を作成し、さらにそれらカンファランスのプロシーディングを収集した。
3)以上のような基礎的作業を行うなかで、同文庫には、現象学的社会学の学祖といって良いアルフレッド・シュッツ (Alfred Schutz) 自身がそれぞれの著者から寄贈された論文のオフ・プリントも所蔵されており、また彼の同僚アロン・グールビッチ (Aron Gurwitsch) が残した未刊の草稿、アメリカ合州国における「現象学的社会学運動」を担ったジョージ・サーサス (George Psathas) が手元に所蔵していた様々な一次資料も所蔵されていることが判明し、それらについても目録を作成した。
4)前項で述べた第一、第二の資料は、現象学的社会学という視座がいかなる布置連関のもとに位置づけられうるのかを考えていくうえで、これまでにない新たな視点を提供してくれた。また第三の資料も、現象学的社会学が世界的規模で展開していく過程を解明していくうえで貴重な情報を提供してくれた。
5)本研究は、それ自体としては、いまだ形になった具体的成果を出すには至っていないが、早稲田大学から2014年度の在外研究を認められ、同年5月から約半年間、コンスタンツ大学に滞在して「ドイツにおける現象学的知識社会学の展開」を含む「ドイツにおける知識社会学の研究」を行う予定にしており、本研究を行うなかで作成することができた諸資料の一覧表と目録は、その在外研究を推進していくうえでおおいに役立つはずである。