表題番号:2013A-6109 日付:2014/04/05
研究課題文学学術院所蔵「木下尚江資料」の最終整理・データベース化と、尚江文学の総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 中島 国彦
研究成果概要
 早稲田大学の資金援助で実施されている「文学学術院所蔵木下尚江資料」の整理・公開は、現在最終段階に来ている。教文館版『木下尚江全集』に未収録の資料の整理を進めて来たが、その大半は整理を終え、『木下尚江資料集』第1集(2010・2、早稲田大学国際日本文学・文化研究所)、第2集(2012・3、同)、第3集(2013・2、同)に翻刻紹介した。全集を補う資料として歓迎されている。その他の資料のうち、尚江の自筆ではないが、尚江の演説の速記が残されており、尚江の演説のさまがうかがわれる資料なので、活字化を達成した。更に、尚江自筆ではあるが、田中正造の伝記執筆のための資料メモが数百枚残っており、こうした資料は整理が困難であり、デジタル撮影した画像をそのまま公開したほうがいいケースでもあるので、そのような処理で、画像データベースに追加して公開する準備をしている。現在、解題の執筆中である。
 その他、残された資料の大部分をデジタル撮影し、画像の整理を試みている。中には、稿本のままで伝わった資料(アメリカの文献の翻訳)もあるが、尚江の自筆ではなく、どうしてそうした資料が伝わったかはわからない。現在まで、その出典を突き止めており、なんのためにそうした翻訳が存在するのかの実態を今後解明していきたい。
 今回特に力を入れたのが、尚江に宛てて書かれた田中正造の書簡の意味付けである。まず書簡を翻刻し(正造の字は特徴があり、判読困難のものも多い)、正造と尚江の関係の分析に、方向を向けた。おのずと田中正造の明治末から大正初めの治水行脚の内実を分析することにもなり、田中正造論としてもある達成が見られたと考えている。今後もさらに追及したいと思っている。
 今後の計画としては、完成間際の、「文学学術院所蔵木下尚江資料」の総目録の刊行がある。番号順に整理され、どうしたらその全貌が理解出来るかを検討中である。2014年中には、何とか刊行にこぎつけたい。