表題番号:2013A-6100 日付:2014/04/01
研究課題12~13世紀和歌表現史の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 教授 兼築 信行
研究成果概要
まず、タブレット型のコンピュータを購入し、古くなっていた器機を更新、携帯性の高い研究推進の基盤を確立した。その上で、8月27日~28日、12月27日~28日に京都(コープイン京都/会議室)にて開催された、12世紀後半成立の私家集である頼政集の輪読会に参加した。また1月27日にも京都(仏教大学/黒田彰研究室)で開催された同輪読会に参加した。源頼政は源平争乱の初頭に、宇治平等院で敗死した武人として著名だが、12~13世紀の和歌表現史の上の重要な結節点に位置する人物であり、その詠作態度と作品とは、院政期和歌のひとつの究極、到達を示すとともに、中世和歌を領導していく俊成―定家のラインは、これと批判的に対峙して、新たな古典主義的価値観を確立されたものと捉えることが可能である。そうした意味で、歴史的、文学史的に存在感の実に大きい頼政の歌業がもつ意義について、主に関東・関西・中国地方から参集した研究者と広汎な討議を重ねることができたが、難解なつ本文に問題の多い頼政集の注釈作業に参加し、これを大幅に進展させることができた。既に『頼政集新注 上』(青簡舎)として一部が上梓されているが、これに続く『中』の原稿を完全に完成させることができた。この輪読会には、久保木秀夫(鶴見大学)、黒田彰子(愛知文教大学)、藏中さやか(神戸女学院大学)、中村文(埼玉大学)、野本瑠美(島根大学)、安井重雄(兵庫大学)など、12世紀後半の代表的な和歌研究者が参加している。これと併行して、13世紀初頭にかけてのユニークな女性歌人である建礼門院右京大夫の家集研究を進め、従前の研究が深化していない集末尾の所謂再出仕期の和歌について考証を行い、その一部を口頭発表したほか、論文作成を進めた。この結果、頼政集の読解に多くの新知見を得るとともに、右京大夫集についても従来の説を改め、集成立の経緯を見直すことのできる発見があった。後者については2015年度前半に活字化の予定である。