表題番号:2013A-6067 日付:2014/04/11
研究課題国際的人権保障におけるアメリカ最高裁判所の役割に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 宮川 成雄
研究成果概要
 本研究課題の2013年度における研究活動の報告として、2013年4月16日に下されたアメリカ連邦最高裁判所の判決、Kiobel v. Royal Dutch Petroleum, 133 S. Ct. 1659 (2013)判決についての検討をあげておく。同判決は、外国人不法行為法(Alien Tort Statute)の解釈に関して、同法の域外適用がないことを判断した。この判決の結論の妥当性については、宮川が受入れ教員となって早稲田大学での訪問学者として2013年度に研究協力をいただいたアメリカのWashburn University School of Lawの教授であるAlex Glashausser氏が、大きな疑問を呈しておられる。この点について、早稲田大学で2013年7月24日に開催された比較法研究所公開講演会で、同氏は鋭い批判論を展開された。宮川は、この講演会の世話人および通訳を務め、講演原稿は、『比較法学』48巻1号に、宮川による翻訳が掲載される予定である。
 また、アメリカ連邦最高裁は、Kiobel判決に先行して、外国人不法行為法に関わる判例形成の中から生まれた連邦法である拷問被害者保護法(Torture Victim Protection Act)について、法人による人権侵害への損害賠償に対して、同法の適用がないことを判断するMohamad v. Palestinian Authority, 132 S. Ct. 1702 (2012)判決を下した。Kiobel判決とMohamad判決を併せて考慮すると、外国人不法行為法の現代的機能として期待されてきた、多国籍企業等による海外での人権侵害について、もはやアメリカの連邦裁判所で争うことが極めて困難となってきたといえる。Mohamad判決については、宮川が世話人を務めるアメリカ法判例研究会でもとりあげ、2013年5月24日に、東京電機大学助教の小沼史彦氏による報告をいただいた。宮川は外国人不法行為法に関わるこれらの判決の検討を進める中で、講演会や研究会で表明された多くの論者の見解を踏まえて、自らの見解を形成する作業を進めており、2014年6月21日に開催される合衆国最高裁判例研究会(於、学習院大学)において報告する予定である。