表題番号:2013A-6064 日付:2014/04/10
研究課題フランスの内部者取引規制
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 鳥山 恭一
研究成果概要

 資本市場にかかる内部者取引規制についてフランスでは、1970年12月23日の法律第70-1208号によりはじめて内部者取引を禁止する刑事罰規定が定められた。その後、この規定は1983年、1988年、1989年、1996年、2001年に改正され、対象者および対象行為の双方について対象が拡張され刑事罰も加重されている。
 他方で、フランスでは、1989年8月2日の法律により「証券取引委員会(COB:Commission des opérations de bourse)」に対して、行政罰である制裁金(sanctions pécuniaires)をもって内部者取引に制裁を科す権限が認められている。現在ではCOBが2003年に改組されて成立したAMF(Autorité des marchés financiers 資本市場機構)がその一般規則において、うえにみた刑事罰規定とは別個に内部者取引を禁止する行政罰規定を定めている。
 フランスの内部者取引規制は以上のように、相互に独立した刑事罰規定と行政罰規定からなっている点に特色がある。本研究はそうしたフランスの内部者取引規制の内容を、その生成の経緯、運用の実態、問題点と今後の展開の方向も踏まえて明らかにすることを目的にしている。 
 さらに、資本市場にかかる内部者取引について欧州共同体でも、1989年11月13日の閣僚理事会指令が構成国の国内法による規制の内容を調整しており、その後その規定は、2003年1月28日の欧州議会および閣僚理事会指令(市場濫用指令)に引き継いで内容が拡充されて定められている。フランスの規制もそれら欧州共同体の指令の規定に適合した解釈をすることが求められている。現在では、内部者取引の規制も含めた欧州共同体の新たな規則が提案されている。
 本研究はそのような欧州共同体法の規定も対象にし、刑事罰を定め法律規定と行政罰を定めるAMF一般規則の規定とともに、それらの規定にかかる裁判例とAMFの運用も対象にすることにより、フランスの内部者取引規制の制度の内容をいわば立体的に明らかにすることを目指している。
 現在、研究成果を公表する論文を執筆中である。