表題番号:2013A-6063 日付:2014/03/24
研究課題知的財産法学の理論と実務を架橋する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 高林 龍
研究成果概要
 本研究は,知的財産法の実務的側面からの研究と理論的側面からの研究を連動して行うものであり,文献収集等は主として個人研究費を活用して行い,個人研究費ではカバーできない,研究補助員の協力を得た研究とか,研究補助員と共に行う現地へ赴いての調査や研究を本研究費を用いて行おうとするものである。その結果,①2013年11月に中国・蘇州で,世界から著名な知的財産法の学者を招聘して中国人民大学主催で開催された,全2日間の極めて大規模なシンポジウムに研究補助員ともども参加して,わが国の知的財産関係訴訟の処理とりわけ知的財産高等裁判所の果たしている役割などについて報告を行うとともに,各国を代表する有力な学者や実務家らと意見交換を行い,世界的規模での知的財産法学の理論的かつ実務的な研究の現状につき共通の認識を得ることができた。② 2013年12月には米国UCバークレーから著作権法学会の第一人者ともいえるサムエルソン教授を招聘し,またわが国からも著作権法学の第一人者といえる中山信弘教授や,実務家として知財高裁所長など有力な学者・実務家を招聘して「著作権法学の将来」と題するシンポジウムを実施し,2014年3月には早稲田大学において,現在,特許法分野での喫緊の研究テーマである技術標準化必須特許権の権利行使を巡る問題点,FRAND条件によるライセンス交渉の具体的な進め方などについて,日米の訴訟事件を直接担当している(いた)裁判官を招聘してシンポジウムを開催した(本シンポジウムについては3月24日の日経新聞朝刊でも紹介されている。当日は,小野講堂が一杯なり,入りきれない参加者は外部でモニターを見て貰った。)。これらのシンポジウム開催の費用は別研究費を利用しているが,これらのシンポジウム開催に向けた研究補助員による事前調査費や事務経費として本研究費を使用した。研究費には科研費等,それぞれ使途に厳格な制限があるため使い勝手が必ずしも良くないが,課題の遂行のためには研究費の使途に余り制限が課されていない特定課題は,大変使い勝手が良く,感謝しており,次年度以降もこのような特定課題が継続することを望みたい。
 以上のとおりの研究活動によって,知的財産法の理論ばかりではなく,理論と実務を連動させ,両者を架橋するための研究が一歩も二歩も前進したものと自負している。