表題番号:2013A-6061 日付:2014/04/12
研究課題環境法における予防原則と持続可能な発展原則
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 大塚 直
研究成果概要
本特定課題研究助成費は、遺伝子組換えリスクに関する規制やそれに起因した損害に対する責任、その(持続可能な)利用に関する研究への図書資料費及びコピー代として用いた。
 本助成費も一部とした成果として、2014年3月に、“A Japanese approach to the domestic implementation of the Supplementary Protocol”, Akiho Shibata (ed.), International Liability Regime for Biodiversity Damage—The Nagoya Kuala Lumpur Supplementary Protocol (Routledge, 2014), Chapter13を発表した。これは、遺伝子組換え生物等による生物多様性への損害に対する責任を定めた「名古屋・クアラルンプール補足議定書」について、日本における国内実施を検討したものである。
従来、日本において遺伝子組換えリスクに対する規制として、「カルタヘナ法」は存在したが、名古屋・クアラルンプール補足議定書の国内実施を検討するにあたり、それとこのリスクに起因した損害に対する責任を合わせた法枠組みについての考察が中心となっている。生態系リスクを問題とするカルタヘナ法の意義を確認し、生物多様性損害への回復を求める対応措置の実施をどのように導入することによって、悪影響が生じるおそれがある場合に遺伝子組換え生物等を回収や中止する従来の予防原則の枠組みをより強化できるかについての検討を行った。これに対しては、従来の生物多様性影響と生物多様性損害の概念を区別すること、従来の措置命令と対応措置の区別を行うことによるべきであることを示した。
また、このように予防と責任を示した成果は、遺伝子組換え生物のリスクへの配慮だけでなく、環境容量内でその資源をどのように利用するかという、持続可能な発展原則への研究にもつながっている。単にリスクの予防だけでなく、利用の結果に対する事後的な責任を合わせて検討したように、遺伝子組換え資源をどのように利用するかを意識した研究であり、持続可能な発展原則の今後の研究につながると考えられる。