表題番号:2013A-6048 日付:2014/03/08
研究課題オペラ研究の歴史・現状・課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 丸本 隆
研究成果概要
 本研究者は10年以上前からオペラを中心的な研究対象とし、それに関連するさまざまな形態や内容の共同研究(特に本学演劇博物館COE事業におけるオペラ/音楽劇研究)および個人研究(特に科学研究費によるヴェルディ・オペラの研究)に携わってきたが、その過程で日本のオペラ研究のあり方を再考する必要性を強く感じさせられたことが、本テーマ研究の背景をなしている。とりわけオペラ文化が量的にも質的にも世界的に高水準にある日本で、学術的な分野の研究においては欧米の先進諸国に比べて大きく立ち遅れている現状について、歴史的要因の解明をはじめ様々な角度から考察することが、オペラ研究の現状に一石を投じ、その将来的な活性化に貢献しうるであろうと考えられたのである。そしてそうした問題意識をもってこの分野の研究に一歩踏み込み、その一定の蓄積を、直近の例として、2013年6月に「宝塚歌劇と世界の音楽劇」を全体テーマに掲げて開催された演劇学会全国大会で担当した総括講演における、オペラ研究の現状と課題をめぐる発言を通じてアウトプットすることができた。
 8月より開始された本研究はそうした基盤のうえに立ち、先述の講演原稿をもとに同学会紀要『演劇学論集』(57号)に書き下ろすこととなった論文の執筆と連動させ、「オペラ研究についての研究」のさらなる深化を目指すものとして構想された。「ヴェルディとリソルジメント・オペラ ―オペラ研究の(不)可能性をめぐって」と題するその論文は、ヴェルディ・オペラの研究に付随する諸問題を例にとり、オペラ研究一般の問題に立ち入って、日本では「不可能」とすら思われがちなオペラ研究にともなう困難性の要因を分析し、さらにその実現の可能性を探ろうとするものである。論文中のヴェルディ・オペラそれ自体に関する分析・論述は主に科学研究費による研究を踏まえたものであるが、第7章「オペラ研究の”不可能性”と”可能性”について」は本研究と密接に関連している。
 そうした本研究課題の遂行に当たっては何よりも、オペラ研究が盛んな欧米の現状の考察が必要とされたが、そのため具体的には、夏期のイタリア・ドイツへの出張時における作業を中心に多くの関連資料を収集し、それらの解読や整理を行った。そしてそれらを活用して執筆を進めた論文は、本研究期間内に寄稿を完了し公刊の運びとなった。