表題番号:2013A-6044 日付:2014/04/18
研究課題ハーグ子奪取条約の批准に伴う国内実施法の運用と課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 棚村 政行
研究成果概要
ハーグ子奪取条約については、日本でも2013年5月に国会で条約の承認決議がなされ、同年6月に国内実施法が成立した。日本政府は2014年1月24日正式署名を行い、4月1日から加盟することになった。アジアでは、韓国、タイ、シンガポール、スリランカ、香港が加盟しており、日本もようやく加盟に漕ぎつけた。私は、2011年7月から法務省の法制審議会の委員として、また外務省に設置された中央当局に関する懇談会の委員として、国内実施法の起草作業に関わり、その後の子の返還手続の実施体制の整備や2013年1月26日に開催された外務省のハーグ条約調停に関する国際シンポジウムにも、日本代表として出席し討議に参加した。2013年8月30日には、早稲田大学において、日韓法学会・韓日法学会共同国際シンポジウム「日韓における国際的な子の監護問題とハーグ子奪取条約」というテーマで、「日本におけるハーグ条約国内実施法の概要」という報告を行うとともに、日韓のハーグ条約に関係する実務家、研究者らの活発な討議と交流の機会を企画コーディネイトした。また、2013年9月21日には、東京家事調停協会主催の渉外調停研究会では講師として「渉外事件における親の離婚と子どもたち」というテーマで、渉外家事事件、子の監護に関する国際的な事件の国際裁判管轄権、準拠法とともに、ハーグ条約の特色、内容、国内実施法について、調停委員、裁判官、調査官に対する講演を行った(棚村政行「渉外事件における親の離婚と子どもたちー調停への期待」調停時報186号56~76頁(2013年))。さらには、2013年11月9日に、明治大学で開催された、日本ローエイシア友好協会主催の「ハーグ条約の円滑な実施に向けて」という裁判所、外務省、日弁連、国際仲裁人協会、研究者の合同シンポジウムにおいても、「返還拒否事由の真理判断に関する諸問題」につき総括的なとりまとめをした(戸籍時報掲載予定)。2014年4月
1日には、アメリカ国務省を通じてアメリカ人の父親30名の日本人女性に連れ去られた子に対する面会交流援助がなされ、日本の中央当局としての外務省のハーグ条約室が対応をとっている。本特定課題での理論的実務的研究の成果が活用されている。