表題番号:2013A-6041 日付:2014/04/11
研究課題日本における商品先物取引法制の課題と展望
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 教授 尾崎 安央
研究成果概要
2013年度において、総合取引所構想が一方で進行している中で、商品取引所での取引があまり芳しくない状況を呈している。日本市場の存続の危機といってよいであろう。研究代表者は、これまでも日本の商品市場の重要性について様々な機会を通じて発言等を行ってきたが(具体的内容の最近のものとして、たとえば東京商品取引所2013年度の市場取引監視委員会議事記録、日本商品先物取引協会2013年度自主規制委員会議事録など)、2014年3月に開催された産業構造審議会分科会(商品流通情報分科会)でも現下の商品先物市場の諸課題のうち、いくつかについて述べる(同議事録参照)とともに、本研究を通じて得られた活性化策など諸課題の検討成果をもって、関係個所に提言を行った。
本研究は、当初、ヘッジ会計と商品先物取引の問題を検討する予定であったが、年度途中からいわゆる「不招請勧誘規制に対する緩和論」などが問題となり、その点に関する意見具申の必要性も出てきたことから、当初の予定にはなかったものの、喫緊の課題としてこの問題を取り上げ、検討を行うこととした。2014年4月現在、その点をも含めた省令(商品先物取引法施行規則)及び監督官庁の監督指針(商品先物取引業者等の監督の基本的な指針)改正のためのパブリックコメントが実施されているが、当該監督官庁とも事前に連絡を取り合い、研究の成果を踏まえた様々なアイデアを述べることを通じて、立案作業に協力した。
今回の省令等の改正提案には、総合取引所構想を背景にした金融商品取引業者と商品先物取引業者とが作成する書類の重複問題への対応、バイナリ―・オプションに係る規制の導入、不招請勧誘規制に係る見直しなどが掲げられている。そのうち、不招請勧誘の適用除外に関しての提案において、熟慮期間等の考え方が適用除外として採用されていることが注目され、これはかつての商品先物法規制に例を見るものであるといえる。不招請勧誘の問題は、消費者・一般大衆投資者の保護にとって重要な施策である一方で、商品先物取引法制においては過剰規制になっているのではないかという意見もある。今年度の研究においては、その問題点を整理し、それぞれについて検討を行うにとどまったが、この点の検討をなお2014年度も続けていく予定である。
現在は、自主規制団体に重要な課題の実現を期待することをパブリックコメントの内容(理解度確認書面やアラーと機能の義務化)などを含め、具体的方策を検討する当該自主規制団体での議論に参加しているところである。これらについては、十分な検討をしてこなかったが、法的問題点が発見できたときは、2014年度以降の検討課題として設定したい。
総合取引所構想を踏まえるならば、金融商品取引法規制との規制バランスを図る必要があることは当然のことであり、そのため今年度の研究では検討課題の確認を主としつつも、喫緊の課題としては具体策それ自体を検討し、特に不招請勧誘規制の在り方などについて、一定の成果を得ることができたと考える。
今後、今年度の成果や現在進行中の検討の成果をもって、審議会や取引所の委員会、自主規制団体の委員会への参加し、また論説等として成果を公表していく予定である。