表題番号:2013A-6037 日付:2014/04/15
研究課題福島第一原発事故における政府・東電の記者会見とマス・メディア報道の比較分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 瀬川 至朗
研究成果概要
 瀬川は2011年、東日本大震災における福島第一原発事故の初期報道において、主要全国紙が「炉心溶融」の問題をどのように報道したか、という問題意識に基づき、主要全国紙である朝日・毎日・読売・日経の記事(2011年3月12日朝刊~6月11日夕刊)を対象に、見出しのキーワード分析を実施した。その結果、当時の新聞報道が、政府・東電の記者会見をそのまま報じる発表報道(大本営発表報道)だった可能性が強いということを示した。研究成果は「原発事故は『大本営発表』だったか 朝・毎・読・日経の記事から探る」(『Journalism』2011年8月号)に掲載するとともに、いくつかの学術的会合で発表している。しかし、実証面で不十分ではないかとの指摘を受け、発展的な研究の実施を考えた。
 本研究では、政府・東電の記者会見と新聞の報道を、より精緻に数量的に比較分析することにより、原発事故直後の新聞報道が発表報道だったかどうかを、実証的に明らかにすることをめざす。
 初年度の2013年度は、分析に必要な政府記者会見の詳細なデータベースを構築することを試みた。政府会見には官房長官の会見と経済産業省・原子力安全保安院の会見の二つがあった。2011年3月11日~4月11日に開催された二つの記者会見について、情報公開法に基づく行政文書開示請求を実施し、記者会見記録の詳細なテキスト入手をそれぞれ内閣府、原子力規制庁(原子力保安院の後継組織)に対して試みた。
 官房長官記者会見については、内閣府から、首相官邸HP上に各記者会見の動画と概要テキストが掲載されており、開示できる行政文書もHP上のものと同じであるとの回答を得た。そのため、官房長官会見の動画を視聴し、記者会見の詳細について質疑応答を含めて文字起こしすることにした。2013年度中に2011年3月18日まで計20回の記者会見の文字起こしを終えた。
 また、原子力安全保安院の記者会見については、原子力規制庁から、3月13日~4月11日のあいだの記者会見の議事概要についての開示を得た。3月11日と12日の記者会見の議事概要は存在しないとの回答を得た。原子力安全保安院の記者会見についても、動画をもとに詳細な文字起こしをすることを考えている。
 新聞報道については、朝日、毎日、読売、日経4紙を対象に、「溶融」の文字を含む記事の収集をおこない、分析に用いる記事データベースを作成した。
 2014年度以降は、科学研究費補助金(基盤C)による研究費などを活用しながら、現在構築しつつある政府記者会見のデータベースを更に完成させるとともに、そのデータベースを用いて記者会見の詳細な内容分析に取り組む予定である。