表題番号:2013A-6036 日付:2014/04/16
研究課題自治体行政の領域に関する研究―行政の外延を考える:米国の地方自治体の場合―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 稲継 裕昭
研究成果概要
本研究は、現下の自治体行政の外延を明らかにしようとするものである。
自治体行政の外延といった場合、その境界は、国の行政との間にもひかれ得るし、民間ビジネスとの間にもひかれ得るが、本研究では後者(民間ビジネスとの間)をターゲットとする。これに関連するものとして従来、公私二元論のもとで、新公共経営論(ニュー・パブリック・マネジメント)、民営化などの議論が展開されてきた。しかし、本研究は、従来の公私二元論に単純に依拠するのではなく、公私融合論も射程に入れて、自治体行政の外延を探ろうとするものである。
 住民ニーズの多様化、各種サービスに要求される専門性が高くなっていることなどから、自治体をはじめとする行政では対応が難しいことも多い。そういった分野でのNPO等との協働が求められている分野も少なくない。そのような分野では公私の境界が曖昧となり、自治体行政の外延を一律に決することができないものも多い。
そこで、公私二元論から脱却し、「公」「私」「公共」の三元論で理解するべきであるという主張がみられるようになってきた。公共の担い手はこれまでは国家や自治体であったが、今後は下からの公共性を強調する考え方、つまり市民が主導権を持って「公を開いて」いくという市民社会運動として公共圏をとらえる考え方もある。これとは逆の現象であるが、公私二元論でいう「私」の領域に官(公)が介入する例も多くみられる。新幹線や原子力発電所のセールスのために首相や担当大臣が他国を訪問して宣伝する光景も当たり前になってきた。自治体レベルでも、域内の婚活支援(お見合いパーティーを開いたり、マッチングをしたり)をする自治体も増えてきている。これらのことは明らかに「私」の領域への「公」の介入であり、「公私融合論」という考え方も提起されている(稲継・山田、2011)
 研究代表者は大学から特別研究期間をいただき、2013年度後期からカリフォルニア州バークレーにて研究を進めている。この機会を利用して、米国内の地方自治体の状況に調査を進めつつある。2014年3月末現在まだ十分な成果発表には至っていないが、当地での自治体やNPOの実態調査なども含め、引き続き、調査を継続していく予定である。