表題番号:2013A-6014 日付:2014/04/04
研究課題改革期の中国における政治指導者の選抜過程と権威主義体制の適応能力:選抜基準・育成過程・政治人脈・特質
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 唐 亮
研究成果概要
1980年代以降、中国政府は若手指導者の選抜・育成をガバナンス向上、一党支配体制の生き残り戦略の一環とし、制度的に取り組んできた。本研究では、中央指導者の選抜・育成に焦点を当て、選抜のプロセスを次のような3つの段階に分け、研究作業を行った。暫定の結論は以下のようなものである。
第1段階は、候補者(後備幹部)の選定である。各級政府は政治戦略の一環として候補者の選定を行う。一つのポストに複数の候補者を推薦したうえで選考を行われるために、選考過程は一定の競争性をもたせる。実力者、トップの目に留まるのは、スピード出世を実現し、中央実力者に上り詰める重要条件である。既存の研究では、政治実力者との出会いをパトロン・クライアントの文脈で解釈することが多かったが、本研究は、登用されるまで複雑な選考過程、複数以上の候補者間の競争で勝ち残らなければならないことに着目し、実力者との「出会い」以外に能力重視の点をも強調したい。
第2段階は、若手指導者が重要ポストを務めている期間である。それは上層部が若手エリートの政治的立場、能力(バランス、団結力)が試される観察期間でもある。一部の若手指導者は要職を務めた間で、政治的立場や能力不足の問題でレースから脱落した。王兆国の左遷はその例である。他方、胡錦涛や温家宝は試練を乗り越え、最終的に最高指導部入りを果たした。
第3の段階は、次期指導者が決定されてから、最高ポストに就任するまでの認知期間=権力基盤の形成期である。民主主義国家では、有権者の支持は権力の合法性、政治的権威を確立する方法である。他方、中国では、選挙というより、現行の執行部、少数の実力者、特に最高指導者が後継者を選考し決定する。そのために、新しい政治指導者、特に最高指導者は選挙とは別の方法で権力基盤を確立しなければならない。特に、最高指導者は軍の掌握が重要である。軍掌握の一環として、トップの候補者は軍事委員会副主席に就任するのが慣例である。