表題番号:2013A-6003 日付:2014/04/10
研究課題縮減時代の都市計画と自治体の役割
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 教授 大濵 啓吉
研究成果概要
1888(明治21)年の東京市区改正条例を嚆矢とするわが国の都市計画法制の根底にある思想は国家高権論(都市計画の決定権は国家にある)であった。1968(昭和43)年に制定された現行の都市計画法制もこの思想を承継したため、結果として都市に住む住民の意思は軽視ないし無視されている。明治憲法は地方自治の制度を持たず、中央集権国家体制をとっていたことが背景にあったといえよう。しかし、時代が21世紀に入り、日本社会を取り巻く状況は激変した。少子高齢化社会が到来し、特に地方都市にあってはいわゆる都市の縮減傾向が顕著であり、現行制度の枠組みの限界がはっきりしてきた。すなわち、現在の日本社会は、中心市街地のジリ貧にみられるような都市の衰退や少子高齢化社会にともなう諸問題の発生に直面しているが、都市計画法は高度成長期に制定されたこともあり、必ずしも現状の対策に十分対応したものになっていない。
そこで本稿では、国家論のレベルに立ち返って、現行の都市計画制度を根本的に洗い直し、自治体の役割を重視した新しいあるべき都市計画制度を提示したいと考えた。
第一に、まずは日本における都市形成の歴史を振り返りつつ、法体系がどのような特質をもつかを析出することにする。都市法ないし土地法は約200本の法律からなっているが、相互の関連、法体系の姿を認識することが現行制度の欠陥をあぶりだす出発点になるものと考えるからである。
第二に、制度欠陥は、多様かつ複数あって相互の深く関連しているが、本稿では特に土地利用規制に焦点を当てたいと考えている。従前の土地利用規制には、現状に合わせて枠組みを変更すべことが多い。街並み規制の重視、いわゆる集団規制の一元化、土地開発と利用手続の統合、従前の行政処分中心のまちづくりから、都市計画における契約制度や協定制度など活用なども新しい手法として徐々に浸透しており、注目すべきであろう。
第三に、東京オリンピックを控えて都市基盤の老朽化が注目を集めている。これは従来の行政法の体系でいえば、公物法の問題ということになるが、伝統的公物法の内在的思想を剔抉し、より現代的な枠組みがあり得るものと思う。もっとも、今回のテーマは様々な問題に拡散する性質を帯びており、筆者の能力では1年でその全てを取り上げるには荷が重いと感じていることも確かである。現在論文執筆中であるが、おそらく公物法については従来、理論的に新機軸がだされていないので、この点は次年度以降の課題として研究を持続したいと考えている。