表題番号:2013A-059 日付:2014/03/31
研究課題認知行動療法に基づく性犯罪再犯防止指導における心理アセスメントの方法論の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 嶋田 洋徳
研究成果概要
 わが国における性犯罪再犯防止指導の取り組みにおいて,性犯罪者に対して,処遇ニーズ,再犯リスクなどの測定ツールの開発を行っている。このようなツールは,少数項目の簡便な自己評価,他者評価によるツールがほとんどであること,「顕在的認知」を測定していることから反応を意図的に歪めることができることなどが問題点としてあげられている。
 そこで,本研究では,性犯罪再犯防止指導における心理アセスメントにおけるSingle Target-IAT課題(以下,ST-IAT課題とする)の適用可能性を検討することの一環として,「潜在的認知」と質問紙法を中心とした「顕在的認知」とのアセスメント結果の対応関係について検討を行うことを目的とした。
 調査対象者は,東京近郊の研究施設,民間クリニック,更正保護施設,および4年制大学の協力を得て,性犯罪者15名,性犯罪以外の犯罪者10名,および一般成人男性30名の計45名とした。測度は,性加害行為と評価の連合強度として,概念カテゴリーを性加害行為(ちかん),評価カテゴリー感情語(快語,不快語),ターゲット刺激を性加害行為画像(電車内痴漢場面),快感情語,および不快感情語とするST-IAT課題を実施し,性加害行為画像の分類に要する反応時間を測定した。また,自己報告における性的嗜好として,性的態度尺度(和田・西田,1992)を採用し回答を求めた。なお,本研究は,早稲田大学人を対象とする研究に関する倫理委員会の承認を得て実施された。
 データ分析の結果,性加害行為と評価の連合強度において,性犯罪者は性犯罪以外の犯罪者と比較して有意に得点が高いことが示された。このことから性犯罪者と性犯罪以外の犯罪者との弁別において,ST-IAT課題が適用可能であることが示唆された。なお,「顕在的認知」において,性犯罪者とそれ以外の者の弁別に対して異なる結果が得られたことから,測定課題(潜在的認知,顕在的認知を含む)の特性に応じて,認知行動療法に基づく性犯罪再犯防止指導における心理アセスメントのテストバッテリーを今後確立することが有用であると考えられる。