表題番号:2013A-051 日付:2014/03/04
研究課題Cdk5の神経機能における役割の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大島 登志男
研究成果概要
<研究目的>
サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)は増殖細胞で細胞周期を制御する最も重要な因子である。Cdk5はCdkのメンバーでありながら、最終分化した神経細胞で機能するユニークなCdkである。Cdk5の活性化サブユニットであるp35欠損マウスでの空間学習記憶の障害を報告した(Ohshima et al., JNC 2005)が、p35欠損マウスには脳形成の異常があり、空間学習記憶の障害が脳形成の異常に起因する可能性がある。H21-23文科省基盤研究C「活性化サブユニットp35コンディショナルKOを用いたCdk5の機能解析」で確立したp35コンディショナルKO(p35cKO)の行動解析を行なうとともに、Cdk5のもう一つのサブユニットであるp39欠損も併せ持つp35KO;p39KOマウスを作製し、脳高次機能を解析することで、Cdk5のキナーゼとしての機能を明らかにすることを目的とした。
 <研究結果>
p35コンディショナルKOマウスは、タモキシフェン投与により誘導されるタイプのCreERマウスとの交配により確立した。このマウスラインを用いて研究を行なった。タモキシフェンを3日間経口投与し、1週後に脳各部位のp35タンパク質量をコントロールと比較し、p35タンパク質量が顕著に減少していることを確認した。3ヶ月齢以降でタモキシフェンを投与し、p35遺伝子欠損を誘導した。これにより脳構造に異常を有しない状態でのp35遺伝子欠損による機能的変化を調べることが可能となった。これまでにモリス水迷路試験を行ない、空間記憶・学習機能の障害が明らかになっている。現在、その障害の原因となる海馬のシナプス可塑性についての電気生理学的な検討と、生化学的な解析を行なっている。さらに、p39KOマウスと交配することで、誘導型p35cKO;p39KOマウスラインを確立した。今後このマウスラインを用いた研究を行なって行く予定である。