表題番号:2013A-050 日付:2014/03/16
研究課題協調エージェントの戦略・効率を反映した自律的作業分割法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 菅原 俊治
研究成果概要
本研究では、ロボットなどの自律的な主体が、工場や深夜の公共の場でなどの広い領域の清掃、広範囲の警備や監視などを複数で協調しながら作業を行う際に、自律的かつ適切に作業範囲を分割する学習手法の研究を目的としている。これまで、複数エージェント(ロボットの行動決定制御ソフトウェア)の協調作業のために、領域を分割して、それぞれが担当する領域を清掃あるいは監視するなどの手法がとられてきた。この領域分割については、予め人手で分割し領域情報を与える、それぞれの能力は同等として自動分割する、などの手法がある。これらの分割は、基本的には面積の等分割を目指しているが、実際の応用を考えると、これらの事前知識や仮定は必ずしも望ましくない。たとえば、ロボットには移動速度、サイズ、バッテリー容量(連続稼働時間)、巡回アルゴリズムなどの差が、一方環境には起伏や障害物、(清掃では汚れやすさ、警備ではセキュリティレベルに基づく)要求される巡回頻度の差を考慮する必要がある。本研究では、これらの差を反映でき、しかもエージェント自ら自律的に決定する領域分割方法を提案する。

 本研究提案期間において、複数ロボットによる清掃問題において、エージェントの巡回アルゴリズム、環境の汚れやすさを反映する手法を提案した。具体的には、作業の余力を表す値を計算し、それに基づいてある戦略に基づいて担当領域を拡大する(担当領域拡大戦略と呼ぶ)。この拡大行動の後に近隣のエージェントに拡大した領域を近隣に通知するが、その領域に競合がある(つまり重なりがある)場合、その余力に基づいて、その範囲を決定する。これにより、各種差を反映した分割が可能となることを示した。また本結果を、国内研究会および国際会議で発表を行った。

 本研究のさらなる課題も多数ある。たとえば、環境の学習(清掃問題の場合)、各種パラメータの自律的設定がある。また、提案手法では、障害物やロボットの物理的能力(サイズ、移動速度)も反映できるはずではあるが、その実験は時間の関係で行っていない。これらの課題を今後の研究方針とする。