表題番号:2013A-047 日付:2014/04/14
研究課題温度感受性モノクローナル抗体を用いたタンパク質精製系の確立
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 岡野 俊行
研究成果概要
本研究の申請段階において研究代表者らは、光受容分子CRYのC末端付近に対する1つのモノクローナル抗体(C13-mAb)が、抗原との結合において顕著な温度依存性を示すことを見いだしていた。この知見に基づき本研究では、温度依存的なタンパク質精製系を構築することを目指した基礎研究を行った。具体的には、申請書に記載した【研究1】および【研究2】を行った。なお、【研究3】モデルタンパク質へのタグ配列の付加と精製系としての実施例の提示は、進行中である。

【研究1】C13-mAbが認識する抗原部位(エピトープ配列)を絞り込み
 C13-mAbの作製に用いたcCRY4-CCT領域は60アミノ酸長である。モノクローナル抗体が特異的に認識するエピトープ配列は通常8-12アミノ酸長程度である。そこで、cCRY4-CCT領域を重複する約16アミノ酸長のペプチド10本に分割し、合成したペプチドをさまざまな濃度でC13-mAbと混合し、cCRY4-CCTを固定化した競合ELISAによりエピトープ部位を同定した。その結果、C13-mAbの抗原部位はCCT領域の最もC末端よりの13アミノ酸内に存在することが判明した。

【研究2】エピトープ配列(単独および繰り返し配列)をN末あるいはC末に付加したモデルタンパク質の作製と免疫沈降・温度上昇による精製
 上で決定した配列に基づき、エピトープ配列を付加したモデルタンパク質を大腸菌で発現させ、精製した。モデルタンパク質には、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を用いた。タグ配列は一般に、繰り返し配列とすることにより抗原と抗体の親和性が増大する可能性が考えられるので、抗原部位を2回および3回繰り返したGST融合タンパク質も同時に精製・解析した。その結果、GST融合タンパク質を含む大腸菌粗抽出物から、C13-mAb固定化レジンを用いて、低温でGST融合タンパク質を結合させ、温度上昇により溶出することに成功した。

 以上の解析を通して、温度感受性の抗体が温和な条件におけるタンパク質の高純度精製に適したものとして利用可能であることを明確に示すことができたと確信している。