表題番号:2013A-045 日付:2014/04/11
研究課題代数体の絶対ガロワ群とゼータ函数の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 尾崎 学
研究成果概要
本研究は数学に於いて最も深遠な対象である,絶対ガロワ群の構造の解明を
目的とするものである.得られた研究成果は以下のとおりである.

1.無限次代数体に対するNeukirch-内田の定理

Neukirch-内田の定理(1970年代初頭)は有限次代数体の構造がその絶対ガロワ群に
よって完全に特徴付けられることを主張している.詳しく述べると,
有限次代数体k_1, k_2の絶対ガロワ群G_1, G_2の間に位相群としての同型
φ: G_1→G_2が存在するならば,φは有理数体の絶対ガロワ群G_0のある元
σによるG_0の内部自己同型から誘導される,すなわち,
φ(x)=σxσ^{-1}が成立する.特にσ(k_1)=k_2なので,k_1とk_2は
体として同型である.
Neukirch-内田の定理はGrothendieckの遠アーベル予想の最も基本的な
実例であり,その後の遠アーベル幾何の発展の端緒ともなった非常に
重要な結果である.
例えば,F.Popは有限次代数体のみならず,より一般に
素体上有限生成な体についてもNeukirch-内田型の定理が成立すること
を示している.
しかし,無限次代数体のような素体上有限生成ではない体についてNeukirch-内田
型の定理が成立するかどうかについては殆ど知られていなかった.
このような状況の中で,本研究はある種の無限次代数体についてNeukirch-内田型の
定理が成立することを明らかにした:
Kを有限次代数体上の円分的Z_p-拡大,Fを有限次代数体のGalois拡大体とする.
もしもKとFの絶対ガロワ群G_KとG_Fの間に位相同型φ: G_K→G_Fが存在するならば,
φは有理数体の絶対ガロワ群G_0のある元によるG_0の内部自己同型から誘導される.
特にKとFは体として同型である.

2. 円分的Z_S-拡大体の絶対ガロワ群の自己同型

1の研究成果の手法の応用として,有限次代数体の円分的Z_S-拡大体K
(S : 素数の有限集合)の絶対ガロワ群G_Kの外部自己同型群Out(G)を決定した:
Out(G)はKの体としての自己同型群Aut(K)と自然に同型である.