表題番号:2013A-043 日付:2014/03/31
研究課題コラーゲン様細胞膜透過ペプチドの開発と細胞への抗体導入
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助手 増田 亮
研究成果概要
抗体医薬は高い特異性を有していることから、既存の低分子医薬品よりも副作用の少ない医薬品として利用されている。一方で細胞内にはキナーゼや核酸等、抗体医薬の有力な標的分子は多く存在しているものの、抗体は細胞膜を透過しないため、その適用範囲は限られたものとなっている。近年、細胞膜を透過しないカーゴ分子を細胞内へと輸送するために、cell-penetrating peptide (CPP) を利用した手法が用いられている。CPPは塩基性に富んだペプチドであり、細胞膜と相互作用することで、エンドサイトーシスにより細胞内へと移行することが知られている。しかしながら、従来のペプチド性化合物と同様に、既存のCPPは体内のプロテアーゼによってたやすく分解されてしまうため、生体への応用は困難であると考えられる。またCPPを用いた抗体の細胞内輸送に関する研究はこれまでなされているものの、手法の煩雑さや多大なコストからまだ課題も多い、そこで、当研究室で開発されたプロテアーゼへの分解抵抗性を有する3重らせんCPPを用いて、簡便に抗体を細胞内へと移行する手法の開発を行った。
まず、先行研究の知見より開発された3重らせんCPPのN末端をヨードアセチル化したペプチドを合成した。本ペプチドは、イミノチオラン共存下で抗体と反応させることで、全長IgGへの1ポット標識が可能であった。反応物はゲル濾過によって精製し、限外濾過で濃縮した。3重らせんCPPを付加した蛍光標識抗体を細胞へ作用させたところ、抗体の細胞内への移行が確認された。つづいて、細胞内に移行した抗体の局在を確認すると、それらはエンドソームへと移行していることが明らかとなった。
以上の結果から、3重らせん型のCPPを用いた簡便な抗体への標識法を確立したとともに、全長IgGの細胞内への輸送を達成した。今後はin vivoでも抗体の細胞内輸送が可能かを検証していく。