表題番号:2013A-040 日付:2014/04/08
研究課題FR182876を模倣した新規細胞分裂阻害剤の設計・不斉合成と生物活性評価
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中田 雅久
研究成果概要
4-chlorobutan-1-olのParrikh-Doering酸化により調製したアルデヒドに iPrMgBr を付加させ、その生成物のオルトエステル Claisen 転位によりE-体の生成物を単一異性体として得た。そのDIBAL還元により得たアルデヒドをジメチルアセタール塩化物としたが、TMSアセチリドとの反応は進行しなかった。そこで、その塩化物をヨウ化ナトリウムとの反応によりヨウ化物とし、TMSアセチリドを反応させたところ、HMPAの添加を必要としたが所望の生成物を得た。このアルキン‐アルデヒドから大環状イノンへの変換はアルデヒドのエピメリ化を避けるため温和な条件を必要とするので、分子内野崎―桧山アルキニル化を検討することにした。そのため、アルキンに結合しているTMS基をTBAFで除去し、種々のブロモ化を検討した。最終的に n-BuLi でアセチリドとし、NBS を作用させ、ブロモアルキンを得た。アセタールの脱保護は、pTsOH、CSA、HCl では三置換アルケンの異性化が起こったが、含水 THF 中で TFA を作用させたところ、異性化を伴うことなく定量的に所望のアルデヒドを得た。続くCrimmins の不斉アルドール反応は単一生成物を与え、生成物の二級水酸基をTBS基で保護した後、DIBAL 還元によりアルデヒドへの直接変換を試みたが、アルコール体との分離可能な混合物を得たので反応条件最適化を検討中である。アルコール体は酸化により所望のアルデヒド体へ変換可能であり、大環状イノンを合成するためのルート開発に成功した。
開発した合成ルートは、収率向上を必要とする工程を含むものの、所望の大環状イノンの合成に必要な化合物量を供給可能である。所望の大環状イノンは複数の不飽和結合を環上にもつことに加えて12 員環であるため、中員環よりも渡環歪みは緩和されているので、環化の成功が期待できる。今後は所望の大環状イノンを与える分子内野崎―桧山アルキニル化を検討し、反応のスケールアップを行い、FR182877のCDEF環部位を持つ標的化合物の合成を達成し、がん細胞分裂阻害活性試験を行う予定である。