表題番号:2012B-290 日付:2013/04/11
研究課題中等教育におけるディジタル教科書とソーシャルラーニングの融合に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 吉田 賢史
研究成果概要
現存するディジタル教科書は、紙メディアの教科書をディジタル化し、ハイパーリンクの機能や音声、映像、シミュレータなどのメディアを付加したマルチメディア教科書が主流である。しかしながら、マルチメディア化され視覚効果に訴えた教材が全ての生徒に適切な教科書になっているか疑問である。
そこで、第1に昨年度から構築を始めているソーシャルラーニングシステムの改良、第2にディジタル教科書の作成、それぞれ思考スタイルを考慮しディジタル教科書とソーシャルラーニングの融合を試みた。
第1のソーシャルラーニングシステムに関しては、TwitterなどのマイクロブログやFacebookなどのソーシャルネットワークサービス (SNS) を利用し, 講義を展開するソーシャルラーニングが, 注目されている。SNSが普及する以前は, 研究室, 或いは, 情報センターなどでサーバを構築し電子掲示板システムにより運用していた。先行事例では掲示板を応用し, 遠隔講義における学生と教員のコミュニケーションツールとしてコメントカードシステムを構築したものや、e-LearningのコミュニケーションツールとしてオープンソースのSNSを構築しラーニングマネージメントシステム(LMS) のサブツールとして運用しているものがある。いずれの場合も, ソーシャルラーニングを教員と生徒, 生徒と生徒とのコミュニケーションサーバとして活用している点が共通している。
そこで, ソーシャルラーニングシステム (Social Learning System : 以下SLS) としてCGアニメーションを用いた動画を基盤とする学習者による動画生成共有システムを提案した。このシステムは、授業後の休み時間や放課後の生徒同士の教え合いという学びの場を提供するものである。
第2のディジタル教科書は、生徒一人ひとりに適応した教科書とはどのような教科書であるかに視点を置き、思考スタイルとの関係を調査した。思考スタイルを板書スタイルから判定するシステムを構築。板書スタイルは、教科書同様伝え手の思考スタイルの影響を大きく受ける。判定には、24項目のアンケート質問を用いる。その回答から好む板書スタイル、好まない板書スタイルをシステムが判定する。また、プロトタイプのディジタル教科書を作成し、思考スタイル(板書スタイル)との関係を分析した。その結果、好まない板書スタイルと思考スタイルとの関係性を見いだすことができた。好まない教科書スタイルは、学習遅延の原因となるため、教科書のディジタル化において大切な視点となる。
現在は、24項目のアンケートを用いて思考スタイルを判定しているが、実用面を考慮すると蓄積されたソーシャルラーニングシステムの活用履歴データから学習者の思考スタイルを判定する必要がある