表題番号:2012B-289 日付:2013/04/13
研究課題イタリア産業地域における統計基礎データの整備と地図化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 本木 弘悌
研究成果概要
近年ヨーロッパ経済が不安定となり、EU圏内における地域的経済格差の問題化は、ヨーロッパ経済のみならず、世界経済へも影響を与えている。ヨーロッパ諸国の経済において製造業が占める割合の高い国、つまり、「ものづくり」が盛んな国は限られている。なかでも産地を形成し、地域経済の循環システムを構築している国としては、ドイツとイタリアがあげられる。特にイタリアは全土にわたって産地が分布し、産業分野の多様性と生産量の様子はドイツのそれとは異なる。かつて、成長著しいイタリアの産業集積地域が「第三のイタリア(サードイタリー)」として注目され、日本の高校地理教科書にも、その語と実態について記述されるようになった。しかし、イタリア全土における産業集積地域の分布状況や、地域的特徴について日本国内ではあまり詳細が伝えられていない。本研究者は2000年から継続してきた現地調査から得た知見をもとに、イタリア産地の地域構造を明らかにすることを研究の目的としている。そこで、ここ数年はイタリアの産業地域研究を進めるための統計基礎データの整備と地図化の作業を進めてき。本年はイタリア全土をベースとした製造業に関する統計の整備と地図化に努め、いくつかの分布図を完成させた。分布図は州レベルだけでなく、市郡レベルでイタリア全土分布図を作成した。その結果、よく知られたイタリア経済の南北格差の様子は、二極対立の単純な構造ではないことがわかった。また、製造業だけでなく農業に関する地図も作成してみると、農業の地域構造と工業の地域構造に関連性があることが鮮明となった。なお、地図の一部を使用して、日本地理教育学会大会において「イタリア産業集積地域の構造」として発表を行った。また、統計の整備はこれまでのデータ蓄積と合わせることで、一部ではあるが製造業の基本数値に関して経年変化を追えるようになった。今後は統計の未完部分、特に経年変化の欠落部分の補充と市郡レベルでの製造業地図の精緻化を課題としたい。