表題番号:2012B-285 日付:2014/02/26
研究課題明治期作文教育からヴィジュアル・リテラシーへの応用の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 佐々木 基成
研究成果概要
本研究は、ヴィジュアル・リテラシーへと応用するための明治期作文教育における記事文・写生文の踏査と再構築を目的とした。現在、世界では図像に囲まれた生活環境のなかで、それらにたいするliteracyを教育しようとする志向と実践があるが、日本では十分に体系的に取り入れられていないことを確認した。二〇〇三年のPISA(OECD生徒の学習到達度調査Programme for International Student Assessment)調査結果を受けて、対応策として、学習指導要領の徹底・教育課程実施状況調査の結果を受けた改善の提言の指導への反映・教科横断的な総合的取り組み、の三つを掲げ「非連続型テキスト」と呼ばれているデータを視覚的に表現したもの(図、地図、グラフなど)に対する読解力の必要性が求められている。現在、世界では、図像に囲まれた現代の生活環境のなかでそれらにたいするliteracyを高め教育するというヴィジュアル・リテラシーの思潮と実践があるが日本では十分に体系的に取り入れられていないことを確認した。I.V.L.A(International Visual Literacy Association)や中国の看図作文指導などの実践を整理したうえで、それをどのように効果的に日本の国語教育に包摂しうるかを考察した。図像の読解と描写の営為は明治期の本邦に於いてすでに作文教育に取り入れられている。記事文と写生文がそれである。明治二十年代の作文教育は一般に、範文主義に陥った生命のないものとされているが、事象を文章という連続的テキストへ変換する手順と作法の精密な試行錯誤が実践されていたことを整理した。図像や実物を観察し文章で書き表す記事文や出かけていった場所の対象を書き取る写生文の試みは、その方法論や営為の産物と共に今こそ見直されるべきであると考える。すでに2010年度の科研費奨励研究により明治期二十年代の作文教育の全体像と写生文の多面的な営為は用意している。世界におけるヴィジュアル・リテラシーの実践の調査とそれらを有機的に結びつけ、映像素材や画像を効果的に生徒に示して作文教育の実践をすることを構想し、教育現場において実践した。写真や絵画、ビデオといった非連続型テキストと文という連続型テキストというまったく別種の表現における内容的往還の意義と効果を考察した。更なる成果の公表を期したい。