表題番号:2012B-283 日付:2013/05/27
研究課題韓国の国語科教育に関する研究-論述式作文教育・教科書教材の調査-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 榎本 隆之
研究成果概要
2012年度 特定課題研究助成費(特定課題B) 成果報告書
課題番号 2012B-283
高等学院 榎本隆之

1. 2012年度の研究課題として予定していた項目は次の通りである。
 (ア) 韓国の論述式作文教育の普及に関する調査。(小中高大のすべての段階に導入されている論述式作文教育の理論と実践を調査。)
 (イ) 韓国の国語科教科書教材・編集・構成に関する調査。(小中高すべての国語科教科書を網羅的に紹介していく研究。)
 (ウ) 韓国のメディアリテラシー教育の普及に関する調査。(第7次改訂(2007)で導入されたメディアリテラシーの普及度に関する調査。)
 (エ) 韓国の国語科指導要領(第7次改訂)に関する調査。

2. 論述式作文教育の普及について
 (ア)「大学修学能力試験」の国語領域(文学、話法と作文、読書と文法)における資料を、研究協力者(ソウル教育大学)ならびに大邱教育委員会から供与を受けた。国語領域の出題において、依然として論述問題が重視される傾向にあり、そのことが小中高の国語教育ならびに塾産業に非常に大きな影響を与えている。今後の課題として、大学修学能力試験における論述問題と、高校国語科課程における「遂行評価」との関連を明らかにすることが必要である。

3. 韓国のメディアリテラシー教育の普及に関して
(ア) 教科書のデジタル化が進行しており、国定・検定教科書に対応するCD教材が増えている。2011年度に引き続き、出版社(ジハン社・チュンジェ社)の新教材(小中学校の新教科書ならびにCD教材)を購入した。

4. 韓国の国語科指導要領に関して
 今回は2009改定教育課程に関する資料を、研究協力者(ソウル教育大学)から供与受けた。2009改定教育課程を対象に、2007改定教育課程から変化した部分について分析した。
韓国では教育課程をおよそ10年間隔で改定してきた。しかし、第7次改定教育課程(2007)以降は、多様化する社会のニーズに応えるために、短期間での改定をするべく制度改革が進められた。今回分析の対象としたのは2009年の改定である。2009改定教育課程について、従来から大きく変化した部分について、概略を述べる。
 ① 集中履修(学期ごとの履修科目数を減少させるとともに、複数学期にわたって履修していた科目を集中的に1学期で履修することができるようになった。合わせて、ブロックスケジュール(2~4時間を連続して1科目の指導に充てる)が導入された。このことが国語科教育現場に与える影響を調査した。現在のところ、明確な変化を示す事例は入手できていないが、引き続き調査を続ける予定である。
 ② 学校ごとの裁量権の拡大(従来の授業時間規定は最低限を定めたものであったが、それを「基準」に改定して、基準時間の±20%の範囲で増減してもよいことになった。国語科の授業時間が有意に増減しているというデータは得られていないが、入試問題演習の名目で授業時間が増加しているという事例があり、そのことと国語科の授業時間との関連について今後調査を継続する予定。)
 ③ 選択教育課程の拡充(従来の教育課程は小1から高1までの10年間を共通課程としてその後の2年間を選択教育課程としていたが、2009改定教育課程では小1から中3までの9年間を共通課程としてその後の3年間を選択教育課程とした。国語科の教科書構成には変化が見られなかったが、今後変化する可能性があるので、これについても経過を観察していく予定である。)