表題番号:2012B-278 日付:2013/04/11
研究課題気固界面における反応集積化と有機電子材料の創出
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等研究所 助教 須賀 健雄
研究成果概要
 電荷蓄積能を持つp, n型レドックスポリマー存在下で、その場(in-situ)重合により導電性高分子(PEDOT, PEDOP)を形成することで、高容量かつフレキシブルな有機複合電極の創出を目的とする。本研究ではin-situ重合法として気相酸化重合および電解酸化重合を比較しながら、得られた複合層の電荷蓄積・輸送能について考察した。また、その場重合を有機半導体(ドナー材料)の調製法として提案し、アクセプターとの複合化による光電変換層の構築も試みた。

1) p, n型ラジカルポリマーとの複合化とフレキシブル全有機二次電池の作製
 気相酸化重合はラジカル機構で進行するため、TEMPO存在下では重合阻害される。過剰量の酸化剤p-トルエンスルホン酸鉄(III) (Fe(OTs)3)で予めTEMPOをオキソアンモニウムカチオンへと誘導後、基材(ガラス基板、PET不織布など)に成膜、EDOT雰囲気下で気相重合した(70°C, 60 min.)。電解酸化重合では、TEMPOが酸化される1.5 V vs. Ag/AgClを定電位印加し、その上でEDOTを供給、重合させることで複合膜を得た。得られたPEDOT/PTAm(1/3 w/w)複合膜の放電曲線では、120 C rate(30秒での高速充電に対応)においても理論容量を維持した。PEDOT組成の増加にともない出力特性が向上し、交流インピーダンス測定からも電荷移動抵抗の減少が見られたことから、PEDOTを介した電荷輸送の促進が支持された。
 PET不織布上に形成したPEDOT/PTAm, PEDOT/PGSt複合膜をそれぞれ正・負極として、電解液としてイオン液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BmimBF4)を含むセパレーターを挟み、ラミネートしてフレキシブルな全有機電池を作製した。両レドックスポリマーの酸化還元電位差に相当する0.67 Vにプラトー電位を示し、繰り返し安定な充放電挙動を示す二次電池として作動することを明らかにした。
2) 気相重合を用いたドナー層の構築と光電変換素子の作製
 ITO基板上にホール輸送層としてPEDOT/PSS水分散液を成膜後、酸化剤溶液(Fe(OTs)3/BuOH(1, 7, 10 wt%))を塗布しターチオフェンを気相重合した。エタノール洗浄、ヒドラジンによる脱ドープを経て、ドナー層として無置換ポリチオフェンを得た。アクセプター層としてPCBM/モノクロロベンゼン溶液を積層後、ホールブロッキング層としてTiOxを形成、Alを真空蒸着して積層型素子を作製した。また、PCBMと酸化剤を塗布し、気相重合させることによってドナー・アクセプター混合(BHJ)型素子も合わせて作製した。各層の膜厚最適化およびアクセプターとして吸光度、溶解性の高いPC71BMを用いることで、積層型素子の1 Sun照射下におけるJ-V測定より変換効率η = 0.63 %を示した。また、無置換ポリチオフェンから低バンドギャップ性のポリベンゾチアジアゾールへの拡張を試み、新たなドナー層構築法としての気相重合の可能性を見出した。

 以上の成果を元に、新学術領域研究(元素ブロック)に申請し、無事採択された(2013.4.)。