表題番号:2012B-263 日付:2013/04/11
研究課題注視点記録装置を使った外国人留学生の講義理解過程分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 教授 宮崎 里司
研究成果概要
本研究は、眼球運動を瞳孔、角膜反射方式により、精度よく計測し、コンピューターによって簡便に定量解析ができる装置である、注視点記録装置(アイマークレコーダ:Eye Mark Recorder EMR)を用い、日本語母語話者と日本語非母語話者が参加する接触場面中でも、大学の講義場面に特化し、どのようなインターアクション行動が現れ、講義理解過程における視覚情報処理の問題を、どのように解決するのかを検証するものである。具体的には、大学での講義場面における講義場面のインターアクションを、注視点記録装置を装着した調査対象者によって記録させ、どのような講義理解のストラテジーが援用されているか、また講義担当者が、留学生に対し、内容理解を促すために、どのような講義理解のストラテジーを用いているかを検証し、国際化に向けた大学の講義のあり方を論究する。
また、講義を配信する講義担当者側も、留学生教育に携わる一員として、日本語教育関係者とどのような協同連携を図るべきかを考えなければならないので、こうした検証は、
留学生教育に携わる全ての教員に対する、教員研修(Faculty Development)の重要項目となりうると思われるので、教員のFD(Faculty Development)の具体的カリキュラム構築の参考にもなると考えられる。

具体的な研究成果については、平成18年12月20日付で、平成18年度私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学研究設備等整備費)の交付の内定(18文科高第512号)を受けたので、それを利用して、以下のような実験を行い、継続して分析を行っている。

実験1 実験1では、アカデミック講義場面における留学生の視線の軌跡をアイマークレコーダーで記録し、留学生が文字情報や非言語情報をどのように処理しているかの検証を行った。調査者は修士論文では、CCDカメラを用いて視線の方向のデータを採り、その後
フォローアップ・インタビュー(FUI)を行ったが、CCDカメラでは、調査対象者の大まかな視線方向は認知できるものの、精緻な観察はできない。本実験では、アイマークレコーダーを用いることで、より信頼性、客観性の高いデータを得ることができた。
実験2 実験2では、意見構築のための読解において読み手が用いる読解ストラテジーを眼球運動の軌跡から調査した。具体的には、読後、指定された文章に対する、調査対象者自身の意見を述べるという課題を与え、PC画面上にパワーポイントを用いて、一段落ごとに展示される文章を読む課程で、アイマークレコーダーにて、眼球運動を記録した。さらに、このデータをもとにFUIを行い、眼球運動のもと機能を調査した。これら2回の実験から得られたデータおよびアイマークレコーダーを使用する、新たな方法論の意義を検証することにより、日本語遠隔教育における学習者の眼球運動、アイコンタクトを、対面接触場面との比較を試みた。

以上のような研究を基に、2013年度は、研究発表を行う予定である。