表題番号:2012B-245 日付:2013/04/02
研究課題スポーツによる震災復興と好循環社会システムの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 間野 義之
研究成果概要
スポーツによる震災復興と好循環社会システムの構築を目指し、東日本大震災において甚大な被害があった岩手県、宮城県、福島県において、トップアスリートによる各種イベントを行った。岩手県ではジュニアのイベント参加前後の意識の変化を質問紙にて調査した。その結果、運動・スポーツへの参加意欲などの面での有意な向上がみられた。一方で、参加したアスリートは、地域での一般ジュニアへのスポーツ指導の有用性を感じており、また、それが震災復興につながることへのやりがいも見出せたとしている。被災地以外においても、アスリートは同種の感想を持つと思われるが、とりわけ被災地においてはアスリート自身あるいはスポーツの持つ力を実感できたと考えられる。現地実行委員会からは、イベントに参加したジュニアだけでなく、イベントの担い手・支え手である保護者やスポーツ団体役員らにも、自らの手で復興ができるといった実感を持つ人々が出てきていることも報告された。一方で、スポーツ基本計画で示された地域スポーツとトップスポーツとの好循環にはアスリートのデュアルキャリアが重要となるため、先進地域にてインタビューを行った。その結果、INSEP(国立スポーツ科学センター)では約600名の代表選手のうち400名が寄宿しており、寄宿している大学生年代のアスリートたちは、パリ大学とINSEPとが協議のうえ、選手向けの出張講義や特別カリキュラムなどを提供し、デュアルキャリアを保障していた。アスリートたちとはINSEPの担当者が事前に相談し、スポーツとは関係なく、政治、歴史、文化などから専攻を決めて、大学入学後はそれぞれの将来像に向けて学習・研究を継続する仕組みが確立されていた。わが国でも、アスリートが現役を継続しながら、大学・大学院等でスポーツに限らず幅広く学習・研究することで、長い取り組みを必要とする震災復興に積極的に参加し、自らのキャリア形成を進めながら、将来的には地域においてスポーツ指導・マネジメントを行える好循環の仕組みづくりを進める必要があると考える。