表題番号:2012B-242 日付:2013/04/04
研究課題インターネットを用いた慢性腰痛者に対する運動療法介入研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 金岡 恒治
研究成果概要
【緒言】腰痛を主訴として医療機関を受診し、画像検査によって明らかな疼痛出現部位を特定できる特異的腰痛は約2割程度であり、そのほかの約8割は明らかな原因を特定することのできない非特異的腰痛と言われている。特異的腰痛は主に整形外科において加療され、その治療方法は科学的に検証され、適正な治療方法が選択されている。病態が不明瞭な非特異的腰痛に対する治療方法の科学的検証は乏しく、最適な対処方法は明らかにされてはいないが、運動療法の有効性は数多く報告され、我々は中高齢者の慢性腰痛患者に対して体幹深部筋群のトレーニングを行いその有効性を確認している。今回同様の手法を用いて運動療法実施者の運動実践コンプライアンスをたかめ、より有効性を高めるために“インターネットを用いた慢性腰痛者に対する運動療法介入研究”を計画した。そのシステムの構築には相応の予算を必要とするため、今回の研究では実施には至らなかった。そのため、今後システムが構築された際に必要となる、非特異的腰痛者の病態解明を目的とした調査研究を実施した。
【目的】非特異的腰痛者の腰痛発現部位を推定し、その実態を明らかにすること。
【対象と方法】2008年から2012年の期間に腰痛を主訴に大学内の診療施設を受診した大学運動部員115名を対象とし、脊柱所見、圧痛部位、神経学的所見などの機能的診察所見から腰痛の病態分類を行った。
【結果】腰椎の前屈時痛を有した者は59名(39%)で神経学的所見を伴った者は24名(16%、椎間板ヘルニア疑い)、伴わなかった者は35名(23%、椎間板障害疑い)であった。腰椎の伸展時痛を有した者は74名で後側方への伸展負荷(Kemp手技)で腰痛を誘発した者は56名(37%、椎間関節障害・分離症疑い)、伴わなかった者は18名であった。仙腸関節に圧痛を認めた者は24名で仙腸関節へのストレス負荷テストが陽性であった者は18名(12%、仙腸関節障害疑い)、認めなかった者は3名であった。また腰椎の前屈と伸展いずれも腰痛を誘発しない者は10名で傍脊柱筋に局所的圧痛を認めたものは1名(1%、筋筋膜性腰痛)、認めなかった者は9名であった。
【考察】腰椎の機能的診察所見から腰部障害の病態を推定したところ、椎間板障害の疑いが39%、椎間関節障害の疑いが37%、仙腸関節障害の疑いが12%であった。これらの障害部位頻度が全ての世代の非特異的腰痛者に当てはまるとは限らないが、今後インターネットを介して、腰痛者の病態をアンケート等による遠隔診断を行う際の参考データとして有用であると考える。