表題番号:2012B-241 日付:2014/04/03
研究課題犬の飼い主の散歩行動を推進する効果的な支援方法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助教 石井 香織
研究成果概要
 わが国では5世帯に1世帯の割合で犬を飼っていることが知られている。近年、犬の飼い主における犬の散歩を通じた心身の健康づくりが注目されている。しかしながら、現状では成人を対象にした研究は比較的行われているものの、子どもや高齢者に注目した研究は、国内外を問わず十分に行われているとは言い難い。
 研究1は、自宅で犬を飼うことが児童の余暇身体活動時間に及ぼす影響について検討することを目的とした。6~12歳までの児童978名およびその保護者を対象に、犬の飼育状況、余暇の総身体活動時間および自宅での余暇身体活動時間について調査を行った。その結果、対象児童の14%が自宅で犬を飼っており、飼育率は高学年の方が低学年の児童より有意に高かった。また、週あたりの平均余暇総身体活動時間および自宅での余暇身体活動時間はそれぞれ、244分、66分であった。自宅で犬を飼っている児童は飼っていない児童に比べ、週あたりの総余暇活動時間が40分、自宅での余暇身体活動時間が23分多いことが明らかになった。
 一方、研究2の目的は、高齢者における犬の飼育が日常身体活動量に及ぼす影響について検討することであった。対象となった65~74歳の地域在住高齢者1,926名から、犬の飼育状況および犬の散歩の頻度や時間、IPAQ-Sにより日常身体活動時間に関するデータを取得した。結果として、対象となった高齢者の14%が犬を飼っており、そのうちの71%が犬の散歩を実施していた。また、週あたりの犬の散歩の実施時間は303分間であった。犬の散歩実施者は非実施者および犬の非飼育者に比べて、中高強度の身体活動時間および総身体活動時間が有意に長く、非飼育者よりも推奨身体活動量を満たす者が3.4倍も多かった。
 以上の結果から、成人だけでなく児童や高齢者の身体活動の促進にとっても、犬を飼うことや犬の散歩が大きな貢献をしている可能性が示唆された。