表題番号:2012B-235 日付:2013/02/27
研究課題調査的インタビュー研究における質的データの理論射程―「語り」の心理背景分析から
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 助手 桂川 泰典
研究成果概要
本研究は2011年度に採択された特定課題研究(2011A-925)の発展研究である。
 研究の目的は,質的インタビュー・データの“ゆらぎ”(個人間での多様性や個人内での不確定性)の原理を踏まえた上で,実証研究としてインタビュー・データを位置づけるための科学的分析方法の整備にある。一連の研究は,インタビューの“ゆらぎ”を解釈するための視座として「インタビュー時メタ思考」(インタビュー中に認識しながらも言葉にすることはない思考,例えば「この話をインタビューアーは理解してるのだろうか」以下,MTI)という構成概念を導入している。 2011年度は,主に概念の理論化,2012年度は,実際に実験的インタビューを実施し,概念の妥当性を検討した。
(1)大学生への実験的ライフストーリー・インタビューを行い,MTIの構造を検討した。5因子構造(「ストーリー戦略」「伝達意思」他)が抽出された。(2)クラスター分析を用いて,MTIからみた,インフォーマントのタイプ分類を行った。その結果,インフォーマントは,「関係/構築型」(自己開示への不安が高く,インタビューアーの見解を参照しながら,インタビュー内容を構成していくタイプ)と「自己/再現型」(自己開示の不安が低く,自己の内にある意見を正確に伝達することを重視するタイプ)の2つに分けられた。インタビューデータの“ゆらぎ”要素として対話構築性が指摘されるが,「インタビュー・データの対話構築性とは,インタビュー研究という手法のみならず,MTIからみた,インフォーマントのタイプによって規定される」という,仮説的知見が提示された。(3)インタビュー場面を評価する外的基準を整備するために,英語版セッション評価尺度(SEQ)の翻訳を行い,日本語版セッション評価尺度(J-SEQ)を作成し,その信頼性と妥当性を検証した。探索的因子分析(最尤法,バリマックス回転)および確認的因子分析により,十分な因子的妥当性が確認された。