表題番号:2012B-231 日付:2014/03/04
研究課題インスリンシグナルによる老化制御機構の解明:時空間的イメージング解析を利用して
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 千葉 卓哉
研究成果概要
インスリンシグナル系による老化制御機構に重要な役割をもつ転写因子複合体の機能解明、およびその活性化分子を明らかにするため、以下の研究を行った。

1.In vitroスクリーニング系の確立
抗老化に関与する転写因子が結合し、転写を活性化させると示唆されるDNA配列である、DFCR-RE(モチーフ2)を直列に5個結合させ、分泌型アルカリフォスファターゼ(SEAP)の上流に組み込み、さらに選択用のpuromycin耐性遺伝子を導入したコンストラクトを作製した。マウス肝臓由来培養細胞であるTLR2細胞(SV40形質転換細胞)にこのプラスミドをトランスフェクトし、構成的発現細胞株を3系統樹立した。あわせてネガティブコントロール用として、別のDFCR-RE配列(モチーフ5)についても、同様に3系統の細胞株を樹立した。SEAPの発現量をもとに、それぞれ1系統の細胞株を選択し、以下の実験を行った。

2.確立した細胞株をもちいたスクリーニング
東京大学創薬オープンイノベーションセンターより化合物ライブラリーの提供を受け(36種類)、上記の細胞系をもちいたスクリーニングを行った。36化合物をそれぞれ1μMの濃度で細胞の培地に添加し、0, 24, 48, 72時間後に培養上清を採取し、アッセイキットをもちいてSEAP活性を測定した。この結果をもとに化合物を選択し、さらに以下の解析を行った。

3.スクリーニング系の最適化
上記の実験で決定したポジティブコントロールとして期待される化合物をもちいて、培養液中に濃度、処理時間を変化させて添加し、培地中に分泌されたSEAPの活性を測定した。その結果、化合物番号5番について期待されるSEAP活性の変化は見られたものの、統計的な有意差は見られなかった。

4.HNF-4/PGC-1の結合促進および転写活性化の解析
上記の化合物番号5番をもちいた実験について、PGC-1の発現およびHNF-4/PGC-1複合体の形成変化について、それぞれウエスタンブロット、免疫沈降法をもちいて解析した。その結果、PGC-1の発現は化合物の添加に対して濃度依存的な上昇が見られたものの、複合体形成の明らかな増加は見られなかった。

以上の結果から、化合物添加前のレポーター発現がより低いコンストラクトが必要であることが示唆された。現在、あらたなレポータープラスミドの作製を行っている。