表題番号:2012B-222 日付:2013/04/30
研究課題論理思考問題によるモバイルラーニング:すきま学習による創造的思考力の評価法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 永岡 慶三
研究成果概要
 ここでは「すきま学習」を,「学習意図のない日常活動中に生ずる比較的短い時間的すきまを利用して行う学習」と規定した.従来より書籍等によってもすきま学習は可能であったが,情報通信基盤の整備・普及により,スマートフォンやタブレット型端末などのモバイルラーニング可能な携帯機器が,ほぼ場所によらず常時ネットワーク接続できるようになったため,伝統的な「机に向かい椅子に座って行う学習」以外の場面でのすきま学習が大幅に拡大しつつある.
 本特定課題Bでは,今後への研究継続を目指し,国内・国外の研究者と研究討議・専門知識提供により研究方針のシステム開発の方向性を策定した.同一教材による学習実験を行い,従来型学習とすきま学習の学習効果・効率の比較を行った.また,すきま学習の成立条件,すきま学習場面の可能性探索などを行った.
 大学生および高校生を対象にアンケート調査を行い,98%がすきま学習を経験しているが,その場所は通学等の電車内が92%と最も多く,使用媒体の内訳は書籍94%,スマートフォン78%であった.すきま学習の成立条件についての回答を総合すると,場面としては「動く必要が無く特に他にするべきことが無いこと」,媒体としてはスマートフォンが紙・本より高位となった.また状況として,周囲の状況から浮いてしまわないことがあげられ,参考書やレジュメで学習しては浮いてしまう状況においてもスマートフォンによるすきま学習可能性が示唆された.
 次に実験協力者を,今まで暗記ものに関して「紙に書いて憶える」(通常学習派)か「時間のすきまを見て憶える」(すきま学習派)かの両派に分けた.試験教材は高橋書店『漢字検定準1級 頻出度順問題集』を用いた.両派について,すきま学習と通常学習の両方により学習を行い,さらにAパターン「すきま学習→通常学習→すきま学習」とBパターン「通常学習→すきま学習→通常学習」の2群に分けて,計4グループとした.結果,すきま学習派Aパターンにおいて,点数が上がり習熟が見られたこと,また通常学習派Aパターンでも点数が伸びた.共通して,すきま学習は1問にかかる時間が短く,それだけ復習時間が取れたという声があった.通常学習派Bパターンからは,すきま学習のデメリットとしては人の目を気にし,周囲から浮くことを懸念するという声があった.
 以上より,すきま学習はきわめて有望な学習手段となりうる感触を得た.なお,今回は得点評価のしやすい暗記的題材を用いたが,これを論理思考問題の題材へ適用して行くことが今後の課題である.