表題番号:2012B-218 日付:2013/04/11
研究課題アスペルガー障がいをもつ児童・青年期の発達段階に応じた社会適応プログラムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 佐々木 和義
(連携研究者) 人間科学学術院 助手 桂川 泰典
研究成果概要
本研究は2013年度に採択された基盤研究(C)「アスペルガー障害を持つ児童への神経心理学的観点からの検討」(課題番号:25380894)の予備研究として実施された。
 本研究の目的は、アスペルガー障害(以下,AS)をもつ児童生徒のコミュニケーション向上プログラム作成のための、神経心理学に関する知見を収集することである。
近年,対人コミュニケーション時の視線軌道に、ASの障害特性が顕著に表れる可能性が指摘されている。たとえば、健常児は他者の感情を推察する際に、目と口を注視することで理解しようとしている一方で、AS児は目と鼻に注視してしまうために、他者感情の理解が困難であることが指摘されている(Speer, et al., 2006)。
このような問題に基づくと、従来実施されてきた、状況に合わせた適応行動に気づかせ、習得することを主な目的とする社会的スキル訓練に代表される介入プログラムは、視線軌道やその際の脳機能の活性/不活性を考慮しないまま、遂行されてきたと考えられる。
そこで本特定課題研究(「アスペルガー障害を持つ児童・青年期の発達段階に応じた社会適応プログラムの開発」)では,「児童期におけるヒト顔刺激と社会的場面刺激に対する視線追跡を明らかにする実験研究」を行い,AS児のコミュニケーション時の神経心理学的知見を収集することで、将来的な児童生徒のコミュニケーション向上プログラム作成の一助となる知見を確立させることを目的とした。
研究計画では,都内幼稚園に通う幼児100名を対象に、17インチのモニター画面に提示したヒトの顔刺激を観てもらい、非装着型の視線追跡装置を用いて視線追尾のデータを得る予定であった。しかし,実験準備の段階で,視線追跡装置のキャリブレーション(両眼視野範囲の同定)が,実験協力者の頭部の動きに対して脆弱であることが判明した。そこで,本年度は本実験を行わず,行動の活発な幼児1名を対象として,キャリブレーションの精度を上げることを目的とした,実験環境調整のための予備実験を行った。
調整後のキャリブレーションの精度は約70%であり,2013年度も引き続きキャリブレーション精度を上げるための,実験環境の追い込みおよび機器のアップデートを行うことを予定している。