表題番号:2012B-216 日付:2013/04/12
研究課題うつ病の病態維持に関る前頭葉機能異常と注意制御機能訓練の治療効果
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 熊野 宏昭
研究成果概要
 本研究の進捗状況としては、注意訓練(Attention Training; ATT)課題、効果の評価課題、光トポグラフィ(NIRS)と機能性核磁気共鳴画像(fMRI)のそれぞれを用いた実験のプロトコールを作成し、予備的検討を続けてきた。また、本研究の基礎になる観点を総説論文の形にまとめ、『心身相関医学の最新知識』に発表した。
 ATT課題では、音源を複数用意し、研究従事者及び大学院生に聞き取りやすさ等を調査し、適切な音源を作成した。また、予備実験として、大学生を対象とした介入実験を行った。実験は、統制期間10日間、介入期間10日間とし、ATTを行う前には心理教育を実施した。介入期間には被験者にホームワークを課し、ATTを1日15分行うように伝えた。そして、ATTを行った時間・場所・周囲の状況・集中度・雑念が浮かんだ時の対処法の記入も求めた。結果は、抑うつには効果はみられなかったものの、反芻には有意な改善がみられた。抑うつに効果がみられなかったことに関しては、介入期間の短さや、元々の抑うつの低さが原因として考えられた。
 NIRS用の評価課題としては、注意制御機能の3 つのコンポーネント(注意の選択、転換、分割)の測定が可能となる両耳分離聴課題を作成している。作成に当たっては、研究従事者及び大学院生に課題の難易度、聴覚刺激の聞き取りやすさ等に関する意見を求め、修正を繰り返している。fMRI用の評価課題としては、脳機能レベルで両耳分離聴課題(上記とは別課題)、PASATを、行動レベルでEmotional Distraction課題を作成した。後者については、情動刺激を選定し、プログラムの改良と予備実験を繰り返している。両耳分離聴課題とPASATについては、fMRIを用いた予備実験を5名実施した結果に基づいて課題を改良し、再度、課題やプロトコールの評価のために予備実験を10名について実施することを予定している。現在、6名実施し、結果の整理、分析を随時実施している。
 以上の成果を踏まえて提出した研究計画が、平成25年~27年度の基盤研究(C)に採択されたので、予備実験の結果を踏まえてこれから本実験に取り掛かる予定である。