表題番号:2012B-214 日付:2013/04/12
研究課題治癒困難な傷病を抱える患者と家族の語りと死生観の醸成過程
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 小野 充一
研究成果概要
本研究は、英国Oxford大学で質的研究の調査分析手法を用いて作成されたデータベースDatabase of Individual Patient Experiences(DIPEx)、及びDIPEx-Japanで取り組まれている「患者の語り」データベースの構築で得られた知見と方法論1)を基盤として、臨床現場が死生文化を醸成する機能について検証することであり、「本研究の具体的な目的」は、以下の2点とした。
1)治癒困難な病いを抱える患者と家族がもつ希望や苦悩などが、多くの日本人が持つ死生観に醸成されるまでの継時的・階層的な多次元的構造について明らかにする。
2)病いを治し・癒す場としての日々の臨床現場から生み出される個別の死生観について、専門的支援を受ける立場と専門的支援を行う立場の双方が活用出来る「患者の語り」データベースを構築・公開し、死生文化の醸成という視点から果たす役割と社会的影響について検証する。
研究計画は以下の3部で構成した。1)【死生観の定量的測定研究】は、「死生体験が定着するための態度尺度」を開発し、日本人が一般に共有している死生体験と死生観について統計的社会調査を行って明らかにする。2)【治癒困難な傷病を抱える患者と家族がもつ死生観の定性的研究】とデータベース構築は、「死」や「死」に勝るつらさを体験する臨床現場において「患者と家族の死生体験と死生観」に関する記述的調査(半構造化面接)を行い、「患者と家族の語りのデータベース」を構築・公開する。3)【死生体験が死生観として定着するプロセスに関する定性的研究】は、医療専門職および一般健康成人に対して「治癒困難な傷病を抱える患者と家族の語り」を提示して、前後に「死生体験が定着するための態度尺度」などを用いた質問紙調査を行いその変化を測定するとともに、半構造化面接を行って「患者と家族の死生体験と死生観の語り」が個人の死生観に与える影響を明らかにする。
今年度は、2)【治癒困難な傷病を抱える患者と家族がもつ死生観の定性的研究】について、は治癒困難な病いを抱える患者と家族の語りを聴取してデータベース化するためのリサーチャー養成を行った。さらに、3)【死生体験が死生観として定着するプロセスに関する定性的研究】として、死生領域で研究事績を積んでいる有識者と医療福祉現場で働いており、このテーマに関心の高い医療従事者を招集して、予備的なアドバイザリー委員会を開催して、JHOPE3研究の一環としての「心に残る体験」に関するパイロット調査の概要と臨床死生学の視点に関する多角的な検討を行った。