表題番号:2012B-211 日付:2013/04/12
研究課題メンタリングを用いた授業に関する「わざ」共有化システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 浅田 匡
研究成果概要
 初任者研修におけるメンターとメンティとの関係、互いに持つ期待とメンターのコンピテンシィの評価との関連、およびメンティの学びに関する評価研究の発表をヨーロッパ教育学会にて行った。その結果として、メンティの期待は全般的に高く、メンターに依存的であった。学びの内容についても教師としてのあり方から指導法や学級経営にいたるまで広範であった。また、教材研究に関しての言及も多かった。このことから、教員養成段階において、授業に関する「わざ」はうまく伝承されているとは言い難く、メンタリングによる「わざ」の共有化は、初任者研修においては重要な側面であることが示された。
 また、授業において重要と考えられる指導法に関する教師の認知についての調査研究を行った。対象は、小学校教師122名であった。その結果、①導入段階で児童の興味・関心が持てる発問や教材を提示する、②本時のねらいにそった課題、発問を出し、児童の興味・関心の持続を図る、③児童の実態を把握し、教材研究をする、の3つが重要だと認知され、また実施されていた。一方、児童の発言をつなげる、学び方を学べる授業をすること、は重要とされながらも実施はあまりされていなかった。また実施に移せない理由として、技術不足と準備不足という2点があげられた。以上から、教師は授業において行うべき指導法を知っていながら、実際には実行できない指導法があり、実行に移せない一因として教師の信念(教師は~であるべきだ)が影響していることが示唆された。
 さらに、経験教師を対象とした教授ストラテジーと教授スキルとの関連に関する事例研究を行った。その結果、教授ストラテジーを授業において実現するために用いられる教授スキルへと変換する際に、単元に関する知識など、9つの知識が用いられていることが明らかにされたとともに、学級が異なることで変換される教授スキルが異なること、などが明らかになった。
 以上から、本研究では、経験教師と若手あるいは新任教師との関係、授業において重視される指導法(わざ)、また指導法が実行できない要因、そして教授ストラテジーを教授スキル(わざ)へと変換するための知識、といったことが明らかになり、わざを共有化するためのシステムに必要とされる要件の一部が明らかにされた。