表題番号:2012B-209 日付:2013/04/27
研究課題途上国・新興国における知的財産権保護戦略の法・経済学的調査研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 吉田 和夫
研究成果概要
 本研究においては、途上国・新興国における知的財産権保護について、法律学・経済学的視点からの実証的研究を試みた。具体的には、先進国を含めた世界経済の成長のための誘因両立的な保護戦略について、事例をもとに考察することを目的として、国内外の研究者とともに共同研究を行った。途上国・新興国の市場規模の拡大により、先進国の輸出する財・サービスおよび技術移転の知的財産権保護、また途上国・新興国自身の産業育成のための知的財産権保護の重要性が高まっている。しかし、途上国・新興国でWTOへの加盟などにより法的な整備はなされてきたが、取り締まりがほとんどなされていないのが実態であり、世界経済の成長への足かせになりつつある。法整備だけではなく、現実を踏まえた実行可能性のある制度を考察する必要性が増しており、そのことについて経済学者とともに、研究することを試みた。
 研究分担者の一人である土門教授とは、特に途上国・新興国での知的財産権侵害について、先進国と関係の深い問題を抱えていることを共通の認識とした上で、従来型の著作権侵害紛争のみならず、模造品や商標権・意匠権侵害といった多岐にわたる知的財産権侵害が深刻であることを再認識した。その上で法律学と経済学という異なる学問分野からの共同研究(いわゆる「法と経済学」ないし「法の経済分析」的手法)は、まさしく本テーマを扱うに最適な分野であると考え、法学者と経済学者が異なった角度から現地調査を行い、理論的問題点を解明することを試みた。
対象としたのは、特に(1)知的財産権侵害が自国内産業育成に与える影響、(2)知的財産権侵害が先進国企業に与える影響、(3)誘因両立的な知的財産権保護戦略の3点である。
 その成果の一部は、Koji Domon and Kazuo Yoshida, Incentives for Counterfeit Spare Parts: A Vietnam Case Study in Motorcycle Industrries, Koji Domon, Tran Dinh Lam and Simrit Kaur, Intellectual Property Rights in Developing Countries, Vietnam National University Ho Chi Ming City Publishing Houseにおいて公刊した。