表題番号:2012B-207 日付:2013/04/15
研究課題サブリージョン形成による越境地域空間の創造―欧亜比較による一般モデル構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 教授 多賀 秀敏
研究成果概要
 本特別研究課題は、これまで6年間連続して獲得してきた科研費による地域統合の欧亜比較をアジアでの実態や構想を視座にモデル化する研究の一時的総括と今後の方向性を探る目的で企画・展開された。そのために、年度初めに、それまでの科研費による研究の研究分担者・連携研究者・協力研究者が一堂に会し、総括的報告と、以後の研究戦略会議を開催した。その結果、これまでにないファインディングスの数々が共有され、今後の方向性としては、東南アジアにおけるGMSの調査・分析を共同研究の重点とし、欧州統合の研究分担者等は、個別で科研費を獲得することが合意された。これを以て、2013年度科研費に応募してその獲得に成功した。向後3年間は、当該科研費によるGMSの調査分析に重点的に取りかかることになる。
 この研究報告会とは別に、予備的研究として、GMSの最西端に位置し、GMSの計画による交通運輸インフラの整備がもっとも遅れを取っていると指摘される緬甸への実態調査が行われた。研究代表者が単身約10日間にわたり、ヤンゴン、ネピトー、マンダレイ、ラーシオ、ムセーなどを実地に訪れた。これまでの同国における実態調査の成果をあわせて考察すると、第1に、緬甸における車両台数の大幅な増加が観察された。それは主として昨年からの車両輸入制限の緩和の結果であった。第2に、GMSでは予定されていないヤンゴン・ネピトー間の道路整備が驚くべき速度と規模で進行していることが実感された。政府が首都機能の確立に最重点をおいたことが理解された。第3に、日本が期待している東西回廊につては、ほとんど進展していない(実地ではなくインタビュー調査)。第4に、逆に北部の中国との回廊は、第3国人(緬甸人、中国人以外の国籍保持者)には解放されていない。こうした緬甸の実態は今後の当研究に大きな示唆を与えるものであり、今後とも詳細で慎重な実態調査が必須であることがわかった。